マッシュー・アーノルドが定義したように宗教が「情念によってひきだされた道徳」にすぎないものであるとすれば、武士道はまさしく、宗教の列に加えられるべき資格を有する道徳体系に他ならない。 本居宣長は「しきしまのやまと心を人とはば、朝日ににほふ山ざくらばな(肖像自讃)」 と詠んで日本人の純粋無垢な心情を示す言葉として表した。 たしかに、サクラは私たち日本人が古来からもっとも愛した花である。 そしてわが国民性の象徴であった。 宣長が用いた「朝日ににほふ山ざくらばな」という下の句に特に注目されたい。 大和魂とは、ひ弱な人工栽培植物ではない。 自然に生じた、という意味では野生のものである。 それは日本の風土に固有のものである。 その性質のあるものは偶然、他の国土の花と同じような性質を有しているかもしれない。 だが本質において、これは日本の風土に固有に発生した自然の所産である。 また、私たち日本人のサク