江戸時代以前、男性同士の性愛「男色」は、男女の性愛より「高尚で芸術的」と考えられていた。歴史的「男色」文化の功罪を振り返り、現代のLGBTQへの不寛容や未成年者への性加害問題について考える。 「男色」の方が “高尚” 日本はLGBTQの社会的理解について後進国であるという認識が一般的かと思うが、少なくとも男性同士の性愛については、日本は歴史的に極めて寛容な社会であった。 男同士の性的関係を含む恋は、江戸時代以前の日本では「男色」と呼ばれ、恋愛習慣の一部であった。特に、山岳にある女人禁制の仏教寺院、男性中心の組織である武家社会、男性のみの役者で構成される歌舞伎のように、男だけで閉じた自己完結的な集団―社会学の概念では「ホモソーシャル」な集団―においては、身近に女性が存在しないために、環境に影響されて男性同士で恋をしたり、性的な欲望を満たしたり、友情と愛情が融合して性愛へと発展したりという現象