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ブックマーク / honz.jp (104)

  • 自分だけの答えが見つかる『13歳からのアート思考』 - HONZ

    唐突ですが、少し芸術史の話をします。 かんたんなアートの歴史です。書の要約でもありますが、私個人の見解を入れさらに圧縮しています。アートって苦手と思う人ほど、ためしに読んでみてください。 タイトルにある「13歳」というキーワードですが、これは学校の好きな教科アンケート※で美術の時間がワースト1位になるタイミングだそうです。 ポイントは3人の芸術家になります。歴史上、人類はラスコーに壁画を描いた記録がありますが、文明が発達してからは長く人間は宗教画を描いてきました。識字率が低い時代、たとえばキリスト教の荘厳な教えを広めるため視覚的な効果で説明補助としての役割を担ってきました。 20世紀になり、画家にとって衝撃的な発明がありました。写真の登場です。カメラが風景や人物を一瞬で記録するため、似顔絵を生業としてきた人達はい扶持を無くすのではと不安になりました。 そんな中に現れたのはアンリ・マティ

    自分だけの答えが見つかる『13歳からのアート思考』 - HONZ
    deadwoodman
    deadwoodman 2023/07/17
    “1.マティス 写真からの脱却 ⇒ 上手に描かなくてよい 2.カンディンスキー  具象からの脱却 ⇒ モチーフを描かなくてよい 3.デュシャン 視覚芸術からの脱却 ⇒ 綺麗でなくてよい”
  • 『謎のアジア納豆』 - HONZ

    書店で書を手にとって、巻頭パラパラと数ページめくってからこの解説文で概要を知ろうとする人も多いと思うので、まず結論から言う。 このは傑作だ。あなたの納豆観を覆し、しかも納豆を入り口にアジア中の辺境民族文化の旅へと誘い、さらに現代におけるディープな旅とは何か?という問いかけまでが含まれている。「買おうかな?どうしよっかな?」と悩んでいる暇はない。今すぐレジに持っていって納豆をべながら書を貪るように読まれたい。以上終わり! …というのは解説文としては不親切なので、数ページもらって書の魅力、そして納豆文化の魅力についてガイドしようと思う。申し遅れたが、僕は発酵文化の専門家として、世界各地の不思議な発酵や微生物を訪ねてまわるのを生業としている。文中の著者の問いかけに僕なりに答える形式で、の理解をさらに深める手伝いができれば幸いだ。(ちなみにここから先はネタバレを多数含むので、もう絶

    『謎のアジア納豆』 - HONZ
    deadwoodman
    deadwoodman 2020/06/11
    前にも見かけて気になってたけど、文庫版が出たのか。→https://www.shinchosha.co.jp/book/340071/『世界の辺境とハードボイルド室町時代』の高野秀行氏の著書。→https://honz.jp/articles/-/41695
  • 『プログレッシブ キャピタリズム』経済学が目指すべき目的とは? - HONZ

    作者:ジョセフ・E. スティグリッツ 翻訳:山田 美明 出版社:東洋経済新報社 発売日:2019-12-20 書の著者であるコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は、非対称情報下での市場経済理論への貢献により、2001年にジョージ・アカロフ、マイケル・スペンスと共にノーベル経済学賞を受賞した経済学の泰斗である。 研究面において優れた論文を多数発表し、米国の経済政策に大きな影響を与えたのみならず、クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、世界銀行で上級副総裁・チーフエコノミストを務めるなど、自ら経済政策を遂行する立場にも身を置いた実践者でもある。 近年は、『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』『世界の99%を貧困にする経済』『フリーフォール』などの著作で、グローバルに新自由主義経済を推し進める米国の政策を批判し、富裕層への増税を主張するなど、経済格差是正のための多くの提言を行って

    『プログレッシブ キャピタリズム』経済学が目指すべき目的とは? - HONZ
  • 『QBism 量子×ベイズ――量子情報時代の新解釈』 - HONZ

    量子力学との出会いは大学2年生の春。恐れ知らずにも物理学を専攻しはじめていた私は、この科目の講義を楽しみにしていた。「シュレーディンガーの」(…生きていて、なおかつ死んでいる?)や「トンネル効果」(…物体が壁をすり抜ける現象?)など何やらミステリアスな量子力学について、ついに理解するときがきた! しかし何度か講義に出たあたりから、期待は幻滅に変わっていく。数式の扱いは習ったし、宿題も何とかこなした。でも肝心な「不思議さ」については何も理解できてない。なぜ粒子(あるいは)は、観測をしただけで状態を変えたりするのか? 先生は「受け入れるしかありません」という。周りの友人たちも、「なぜ」にこだわり続けるのは未熟だといわんばかりに、「慣れる」ことを競っている。何か釈然としない思いだけが残る……。 最近では「量子コンピュータ」への注目などから、量子力学が話題に上ることも多くなった。けれど、それ

    『QBism 量子×ベイズ――量子情報時代の新解釈』 - HONZ
  • 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 - HONZ

    「意志の強さは成功するかどうかと無関係」と喝破するビジネス書が現れた。確かに仕事がうまくゆかないとき、「自分の意志が弱いから」と落ち込む人は少なくない。「意志力の不足」が一番の原因と考える経営者も多い。 しかし、気合いを入れても集中力が続かないことはよくある(恥ずかしながら私自身、しょっちゅうそうだ)。書はそうした悩みを持つ人に一筋の光をもたらす優れた自己啓発書である。 書の原題は『Willpower Doesn’t Work』(「意志力など役に立たない」)である。著者は米国の組織心理学者で、成功するために「意思の力」を用いるのは大間違いだと説く。意思に頼っても過去の自分からは脱却できないからだ。 その反対に著者は、自己の内部ではなく外部の環境を変えることで、無理なく状況を変化させるテクニックを指南する。表紙裏のページには「環境を作りコントロールしないと、環境に作られコントロールされて

    『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 - HONZ
  • DNA鑑定とFACT 『DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで』 - HONZ

    DNA鑑定と聞いて私がまず連想したのは、テレビドラマの犯罪捜査のシーンだ。「トレース」や「アンナチュラル」など、最近、その手のドラマをよく見かける。まるで水戸黄門の印籠のように、クライマックスでDNA鑑定結果と真実が提示される。 書は、著者が手がけてきたDNA鑑定を紹介するだけでなく、「DNA」「染色体」「遺伝子」「ゲノム」といった言葉の使い分け方など、基礎的な知識も盛り込まれている。楽しく読める入門書だ。無論、上記のような犯罪捜査に関する記述にも1章を割いている。 その章には、足利事件などの実例も挙げられており興味がある方はそこだけ読んでも面白いだろう。またそこには、ドラマではわからない科捜研の意外な実情も記されている。科警研の力関係や、科学捜査できる範囲の制約などについてである。 科捜研におけるDNA鑑定は、核DNAのSTRを判定する米国ABI社製のSTR判定キット(商品名は「アイデ

    DNA鑑定とFACT 『DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで』 - HONZ
  • 『忍者学講義』忍者、お主は何者ぞ⁉ - HONZ

    「忍者学」は立派な学問である。三重大学では、伊賀地域を中心とした忍者に関する教育研究を推進し、その成果を広く国内外に発信する国際的な忍者研究の拠点として、また伊賀の地域創生に資することを目的として2017年7月1日に国際忍者研究センターを開設し、忍者研究に取り組んでいる。 『忍者学研究』は副センター長で三重大学人文学部の山田雄司教授のもと、文系だけでなく理系、医学系の研究者が一丸となって、忍者・忍術を真っ正面から研究し、現在まで判明した「忍び学」をまとめたものだ。 まずは品化学の分野から忍者に迫る。漫画やドラマなどで目にする丸薬のような忍者。携帯していれば長期間の探査行にも耐えられ、エネルギーの補給となる夢のような事が当に存在するのか。 結論から言うと存在する。古くから伝わる忍術書に書かれたレシピ通りに苦労して作ると、意外にもべられるものが出来上がった。栄養的にも、万能とはいえ

    『忍者学講義』忍者、お主は何者ぞ⁉ - HONZ
    deadwoodman
    deadwoodman 2020/04/17
    タイトル見てカクレンジャーのOPが脳内に流れた。なお答えは“近世の身分秩序でいえば「情報探索や奇襲などの特殊任務につく下級武士」ということになる。”
  • 『意識をめぐる冒険』 我々はどこから来たのか - HONZ

    書は「主観的な感覚や意識はどこから生じてくるのか?」という問いに関する最新の研究成果が紹介された一冊だ。意識の研究ほど、広く根源的なテーマはない。私が死んだら、私の意識はどうなるのだろうか?犬には意識があるだろうか?コンピューターが人間と同じような意識を持つことはあり得るだろうか? 「コッホ博士、私にはサルに意識があるとはどうしても思えません!」 そこで私はすかさず言い返した。 「あなたに意識があることも私にはわかりませんよ。」 書の著者は、カリフォルニア工科大学で教鞭をとり、アレン脳科学研究所のChief Scientific Officerを兼務しているコッホ教授である。DNAの2重らせん構造を解明したフランシス・クリック教授と共に、長らく意識と脳の問題(マインド・ボディ・プロブレム)の研究を行ってきた。 神経系の働きと主観的な意識感覚とのあいだをうまく繋ぐ科学的な理論は未だ見つか

    『意識をめぐる冒険』 我々はどこから来たのか - HONZ
  • 巣ごもりして探求の根を伸ばせ 『13歳からのアート思考』 - HONZ

    子供がウチで過ごす時間が増えている。我が家もその例にもれない。異なっているのは、一家の大黒柱たる私も一緒にウチにいることである。会社を辞めた私は、テレワークをする必要もない。ただダラダラとした時間を過ごしている。様々なものにボンヤリとした興味を抱きながら、目的を見いだすことができずにいる。そんな日々だ。 基的には一緒にサッカーゲームトランプなどをして遊んでいるのだが、午前中は同じ机の上で子供たちは勉強を私は読書をする時間を作るようにしている。あと数年で中学生になる上の子に先回りするつもりで、私は書を読んだ。 私は普通のサラリーマンだったので、専門家(新井のレビューはこちら)とは違うレビューになっていると思う。書の読み方には答えがない。アートの理解レベルが違うのは恥ずかしいが、レビューが違うのは良いことだと思う。皆さんも、ぜひ自由に読んでほしい。 端的に言って、書は私にたくさんの栄

    巣ごもりして探求の根を伸ばせ 『13歳からのアート思考』 - HONZ
    deadwoodman
    deadwoodman 2020/04/09
    “ 好奇心の赴くままに「探求の根」を伸ばすことに熱中しているので、アーティストには明確なゴールは見えていません。ただし、それらの「根」はあるとき地中深くで1つにつながっていく特徴があります。”
  • 『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』哲学界の「ロックスター」が語る、世界が存在しない理由 - HONZ

    書は、「欲望の資主義」「英語でしゃべらナイト」「爆問学問」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー」など、異色の番組を次々と世に送り出してきた敏腕プロデューサー丸山俊一の手による、ドイツの若き天才哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリー番組「欲望の時代の哲学~マルクス・ガブリエル 日を行く~」を、一冊のにまとめたものである。 書の主役であるガブリエルは、2009年に29歳の若さでボン大学の哲学科教授に就任した、ポスト構造主義(ポストモダニズム)以降の「新実在論(new realism)」の旗手として、今、世界で最も注目されている「哲学界のロックスター」である。 ドイツ語英語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、中国語のみならず、古代ギリシャ語、ラテン語、聖書ヘブライ語などの古典語にも精通しており、2013年に刊行した『なぜ世界は存在

    『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』哲学界の「ロックスター」が語る、世界が存在しない理由 - HONZ
  • 『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 - HONZ

    『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 告白しよう。評者はずっと、なるべく他人と関わりたくないと祈りながら生きてきた。楽しいことも悲しいことも何も経験したいと思わない。誰かと揉めたり争ったりするなどもってのほかだ。人生の糧になる? 知るか。全部ストレスだ。願いは一つ、社会的接点を一切放棄して、永遠に寝床で布団にくるまっていたい……。 こんな暗い感情を披瀝したところで会話が盛り上がるはずがなく、賛同が得られるわけでもなし、むしろメソメソうるさい奴だ、望みどおり早く消えればと思われておしまいだ。だから書を読んだとき、やっとこの始末に負えない思いを打ち明けられる、と晴れやかな気分になった。助かった。自分の抱えてきた屈はすべて思想家エミール・シオランが書いてくれていた。書は、彼の人生とそのペシミズム

    『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 - HONZ
  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
  • 『ソーシャル物理学 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』 - HONZ

    センサなどによる詳細な観測で得たビッグデータにより、人間は他者からどのような法則で、影響を受けるのかが明らかになっているという。それを可能にしたのが「社会物理学」という新しい分野。 かつて『データの見えざる手』で話題を呼び、著者のペントランド教授と共同研究をした経験も持つ矢野和夫さん(日立製作所研究開発グループ)に「社会物理学」について解説いただきました。(HONZ編集部) 書は、Alex ‘Sandy’ Pentland教授の Social Physics: How Good Ideas Spread-The Lessons from a New Science (2014)の全訳である。 ビッグデータに関しては、最近ではたくさんの書籍が出版されている。 それらの中で『ソーシャル物理学』に書かれていることは、他書の追随を許さない高みにある。どこが違うのか。著者人には書きにくいことも含

    『ソーシャル物理学 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』 - HONZ
  • 『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ

    厚生労働省は12月24日、2019年の人口動態統計の年間推計を発表し、それが大きなニュースになっている。2019年の日人の国内出生数は、最少だった2018年の91万8400人を下回り、前年比5.92%減の86万4千人となり、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の自然減も51万2千人と初めて50万人を超えて、2017年4月の国立社会保障・人口問題研究所の将来推計に比べると、人口減少ペースは2年も早まっている。 未来予測の中で最も確度が高いのが人口予測であるというのは、未来学者(フューチャリスト)のピーター・ドラッカーが以前から指摘していたことであり、人口の大幅な減少が今さら話題になるというのもおかしな話ではある。これだけ長期にわたる経済停滞が続き、社会がこれだけ若者と女性を痛めつければ、その結果がどうなるかは誰でも分かりそうなものだが、分かっていても

    『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ
  • 日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 - HONZ

    の科学は失速している。一昨年の3月、ネイチャー誌に掲載されたレポートは大きな反響を呼んだ。一般の人たちには驚きを持って迎えられたようだが、多くの研究者にとっては、やはりそうかという感じであった。 『誰が科学を殺すのか』は、企業の「失われた10年」、「選択と集中」でゆがむ大学、「改革病」の源流を探る、海外の潮流、の4章から構成されている。毎日新聞に掲載された「幻の科学技術立国」シリーズが元になっただ。 大学に関しては、行きすぎた選択と集中、地方国立大学の疲弊、若手研究者の待遇の悪さ、博士課程進学者減少などが紹介されており、内部で実感していることと完全に一致する。 どのテーマについても、客観的かつ冷静な記述と考察がなされている。わかっているにもかかわらずマスコミがなかなか書かなかったiPS細胞関連予算の問題点についても、果敢に踏み込んでしっかりと書かれている。 ネイチャー誌の記事以来、論

    日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 - HONZ
  • 『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ

    のっけから著者に反論申し上げたいことがある。出口さんは「まえがき」で、「積み重ねられた歴史を学んで初めて、僕たちは立派な時代をつくれるのではないか」という。つまり書は良き未来を創りあげるという目的のために、テキストとして読むことができると言っているように聞こえるのだ。 たしかに歴史から学ぶべきこと、いや書から学べることはあまりにも多い。それは歴史だけでなく、生き様や人間関係、組織経営に至るまで、読んでいて気付かされることが多いのに驚くばかりだ。 しかし、書は時代をつくるという崇高な目的のためだけのものではないように思われるのだ。いやそれ以上に、純粋に読む愉悦に浸ることができるだと断言できる。これからの時代を考えることはひとまず脇に置いて、早く次のページを開きたいと思わせる書は高度に知的なエンターテインメントでもあるのだ。 書を読むときのイメージは「人類5000年史」という名

    『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ
  • 『江戸時代の天皇』 - HONZ

    昨今の「維新流行」はいったい何なのだろうか。政権交代からTPP、政治家の自己アピールまで、なにかと言えば平成維新だ、平成の開国だ、奇兵隊だ龍馬だと、幕末・維新期になぞらえる。江戸時代は由らしむべし、知らしむべからずの封建的・圧政的時代であり、「鎖国」によって激動する世界史の流れにも目を瞑った時代。それを打ち破ったのが明治維新であり、近代国家日の夜明け、日の青春であるという、いわば「維新史観」が厳然と根を張っていているらしい。だがそれは、維新になぞらえてしまえばもうそれ以上深く考える必要もないという、思考停止の作用を働かせてはいないだろうか。維新=善であると。言うまでもなく、維新とは政権を奪取した側が権力闘争と内戦の勝利を「御一新」と呼び、やがて「維新」と呼んだに過ぎず、そもそも善と悪という基準で判断するようなことではない。歴史の流れに「以前と以後」という断層を安易に設定してしまうことに

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  • 『2050年のメディア』ジャーナリズムの変化は足元から - HONZ

    ここ最近の10年間で新聞の部数は約1000万部減り、売上は5645億円減少したという。これは新聞社一社が、まるまるなくなるほどのスケール感を持つ数字だ。 これほどまでに、急速に市場がシュリンクすることのインパクトは大きい。多くの場合、このようなケースにおいていは、古参同士が潰しあいをしながら新規参入組も迎え撃つという挟み撃ちの状況が強いられるのだ。プレーヤー全員が総負けするかもしれないという状況のなかで、それぞれの企業に勤める中の人にとっても、想像を絶するようなこともあっただろう。 書はこの四半世紀くらいの間、ネットの力によってどのようにメディアが変貌を遂げたのかという歴史を綴ったものである。なかでも中心的に描かれているのが、読売、日経、Yahoo!の三社。これらの企業で繰り広げられる綱引きは、まさにジャーナリズムの異種格闘技だ。 むろん背景には、WEB化に伴うメディア構造の変化がある。

    『2050年のメディア』ジャーナリズムの変化は足元から - HONZ
  • ジャレド・ダイアモンドが導き出す、危機の枠組み──『危機と人類』 - HONZ

    『銃・病原菌・鉄』で一世を風靡したジャレド・ダイアモンドの最新刊がこの『危機と人類』である。主に七カ国を対象として、それぞれの国が陥ってきた危機と、それをどのようにして乗り越えてきたのか。また、今現在まさに危機にある国を取り上げ、比較しながら「国家的危機」についての枠組みについて考察しよう、という一冊だ。書刊行時の著者はすでに80を超えているが、なおパワーのある筆致でぐいぐい読ませ続けるので、心底たまげてしまった。 「危機」にもいくつもの種類があるが、書で取り上げられるのは、国家を揺るがすほど大きな危機、また現代の国家で起こったことについて限定されている。対象とされる七カ国は次のとおり。フィンランド、日、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリア、アメリカ。日だったら、たとえば明治維新の頃何が起こったのか、どのように日人は適応してきたのか──が危機の枠組みを通して語られるわけだ。

    ジャレド・ダイアモンドが導き出す、危機の枠組み──『危機と人類』 - HONZ
  • 『奴隷船の世界史』それは過去完了では語れない、近代そして現代世界の暗部 - HONZ

    西洋近代における奴隷制の全体像を把握できる一冊だ。奴隷貿易の誕生から奴隷制廃止運動まで網羅しているが、書の白眉は奴隷船にまつわる詳細なデータを提示することで、近代社会の実態を浮き彫りにしたところだろう。 奴隷船はその名のとおり、奴隷を運ぶ船であり、映画小説で過酷な環境が描かれているように「移動する監獄」であった。 毎日16時間以上、鎖につながれ身動きできずに板の上に寝かされ、2カ月以上も大西洋上を航海する。健康を損なうと「商品」価値が落ちるので、強制的に1日2回事を与えられ、毎日1時間は甲板上で踊らされた。 奴隷船は大きければ大きいほど輸送効率が高まりそうだが、平均は100トン台半ばだった。600トン超の船が使われていたこともあったが、時代が経つにつれ大型船は減り、18世紀後半には400トン以上は皆無になる。できるだけ多くの奴隷を短期間に集め、船上での奴隷の死亡率を下げるために航海日

    『奴隷船の世界史』それは過去完了では語れない、近代そして現代世界の暗部 - HONZ