〔政治・経済部門〕 阿南 友亮(東北大学大学院法学研究科教授) 『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮社) 1997年、中国の国防費の規模は、日本の2分の1だった。十年後の2007年、中国の国防費は日本の2倍以上となった。さらにその十年後の2017年、中国のそれは日本の5倍に膨れ上がっている。(ストックホルム国際平和研究所) 一体、中国は何のために、こうまで軍拡を続けるのか。そもそもなぜ、中国において軍拡が展開されるに至ったのか。 軍拡の背景に、1989年の天安門事件がある。そこで露になったことは、党は共産党独裁を守るために戒厳令を布告し、最後は、人民解放軍が学生と市民を虐殺したという真実だった。中国では、治安維持にかかる経費は「公共安全費」という支出項目のなかに組み込まれている。2011年以降、その支出が国防費を上回る状態が続いている。このことは、中国国内の反体制的力学がいかに強いかという
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