「聞き書き」は、民俗学の主要な手法のひとつとして認識されてきた。それは近年「インタビュー」や「取材」なども含めて、オーラルヒストリーやエスノグラフィーなど、人文・社会科学系の分野での「質的研究」領域の進展と共に改めて注目されている。その「聞き書き」が、民俗学における本来の意味や趣旨と異なり、過剰に「難しい」ものとして語られるようになっていったのはなぜなのか。方法的な自省のための前提についての考察を試みた。 ●はじめに 近年、人文・社会科学系の分野でオーラルヒストリーやエスノグラフィー、あるいはいわゆる「質的研究」が注目されてくるにつれ、「聞き書き」もまた、これまでと違った照明の当てられ方をしてきています。「インタビュー」や「取材」といった派生的なもの言いも含めて、いわゆる「聞き書き」という方法自体についての自省的言及も、それらを使い回す立場の研究者などの当事者から盛んになってきている。むし