2021年度、自治体が遺体を葬ったケースは約8600件に上るという。高齢化と孤立化で「無縁遺骨」や「墓じまい」が社会問題になっているのだ。 ここでは、「無縁遺骨」の実態と墓じまいの現状に迫った作家・森下香枝氏の著書『ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。将軍家や大名家の子孫は、どのように「墓じまい」と向き合っているのだろうか――。(全2回の2回目/1回目から続く) 跡継ぎがいない19代当主 先祖代々の墓の継承者がいなかったり、遠方で墓参りに行けなかったりという悩みは歴史にその名を残した旧大名家も同じだ。 港区にある都立青山霊園には3代将軍・徳川家光の乳母として有名な春日局の子孫である稲葉家の墓所がある。 そこに「継承碑」と題された珍しい石碑が建ったのは2004年7月だった。 〈稲葉家は19代で継承する実子がなく、この墓地は平成16年以降松平家と共同使用とな