2004年に米アラスカ州で、アザラシジステンパーウイルス(PDV)に感染しているラッコが発見されたとき、科学者たちは困惑した。 ギャラリー:アザラシとアシカの見逃せない写真 11点 PDVは麻疹(はしか)ウイルスと同じモルビリウイルス属の病原体だ。だが、PDVに感染した動物は当時、ヨーロッパと北米大陸の東岸でしか見つかっておらず、西岸のアラスカでは確認されていなかった。 「大西洋のウイルスがどのようにして(太平洋側である)アラスカのラッコに感染したのか、わかりませんでした。ラッコの生息域は広くないからです」と、病原体が海の生態系を移動する仕組みを調べている米カリフォルニア大学デービス校のトレーシー・ゴールドスタイン氏は振り返る。 そこで、氏の研究チームが2001~2016年の15年分のデータを使って分析したところ、PDV感染の拡大と北極海の海氷の減少との間に、相関関係があるという論文が11