序 忘れられた創世神話 それは途方もない歴史の果てに、語り継ぐ者も途絶えてしまった遠い過去の出来事。 世界の創り手が未だ人類と共に暮らしていた時代の、忘れられた最後の記録だ。 「もう、行ってしまわれるのですか?」 粗末な皮衣に身を包んだ少女が問う。〝彼〟は振り向き、頷いた。 「私の正体が露見してしまった以上、もうここにはいられない。君も見ただろう?私が何者かを知った途端、誰もが手前勝手な望みを押しつけだした。無論、それを責めるつもりはない。人類とはそういうものだと何より私自身が知っているからな。だが、偶然に出会ったということを理由にこの集落の人間だけを特別扱いすることはできない。願いを叶えてやれないと知りながら彼らと共に在り続けるのは私にも辛いことなのだよ。もう、この先こうして人間と交わることもないだろう。さらばだ」 「お待ち下さい!」 少女は必死に呼びとめた。 「この先もう人類と関わるつ