明治の日本人はやはり気骨にあふれ、たくましかった。日本人であることの誇りを抱き、信念に基づいて世界に飛び出していった。こういう日本人がいたことを、今こそ私たちは知っておきたい。 その人物は日本の近現代史の表舞台に登場するわけではない。近代国家、日本の仕組みをつくり上げた政治家でもなく、巨大産業を興した事業家でもなかった。しかし、日本の発展を願ってやまない骨の髄からの愛国者であり、フロンティアスピリットに富む開拓者であり、力ではなく徳をもって民を率いるリーダーであった。 その名を森小弁(もり・こべん)という。 『「冒険ダン吉」になった男 森小弁』(将口泰浩著)は、小弁の76年の生涯を、事実に基づいて描いた小説だ。「冒険ダン吉」は戦前の人気漫画である。未開の南の島に流された少年ダン吉が文明社会を築いていくというストーリーで、そのモデルになったと言われるのが森小弁だった。 ひ孫がミクロネシア連邦