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ブックマーク / jtsutsui.hatenablog.com (15)

  • 政治の失敗の構造 - 社会学者の研究メモ

    社会学先日のエントリでとりとめもない終わり方をしたので、今回はフォローします。前回と違ってちょっとまじめに。 市場の失敗→政府の失敗→マスコミの失敗...高校の教科書までは、政府が存在するのは「国民の福祉のため」と書いてあると思います。これに対して、経済学的には国民の福祉を達成するのは基的には市場であり、政府が登場するのは市場がときどき失敗するから、ということになります。そして、経済学の一分野(公共選択論)では、この続きを主張します。つまり政府も失敗する。公共選択論の創始者のブキャナンによれば、民主制のもとでは財政における支出過剰への圧力が高まります(財政赤字へのバイアス)。では政府の失敗に対処するのは...?経済学の世界では、政府と市場のあいだを行ったり来たりします。政府が失敗するなら市場重視、市場が失敗するなら政府重視...というかんじです。ここではこの往復からちょっと抜け出してみま

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    mn_kr 2010/01/29
    “公共財は市場からは十分に提供されないので政府が提供...しかし政府の監視という公共財を政府自身が提供するのもおかしな話⇒「結局は私たちがやるしかない」という意見は道徳的なメッセージではなく構造的要請”
  • 訂正:増刷のお知らせ - 社会学者の研究メモ

    社会学増刷、実はこっちでした...。(勘違いです。すみません。)モダニティと自己アイデンティティ―後期近代における自己と社会作者: アンソニー・ギデンズ, 秋吉美都, 安藤太郎, 筒井淳也出版社/メーカー: ハーベスト社発売日: 2005/05メディア: 単行購入: 2人 クリック: 42回Amazon.co.jpで詳細を見るこちらはおかげさまでよく売れています。ギデンズのだから、というのが大きいのでしょうが、内容としても十分に興味深いです。特に後半。趣旨を短く言うと、後期近代社会では、内的準拠性が飽和してライフ・ポリティクスが登場するが、ライフ・ポリティクスは根的に矛盾した状況で追求されざるを得ないというもの。わけわかんないですね。趣旨を日語でわかりやすく言い換えてみます。近代化とは、目的(道具的)合理性(内的準拠性)の浸透だった。この合理性は、与えられた目的(生産性など)に対し

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    mn_kr 2009/12/02
    “ギデンズのモダニティー論は以下のような主張と一線を画している= * 近代化に伴い、責任主体として自立した合理的個人の確立が進む。 * 近代化に伴い、人間はシステムの歯車になる。(マクドナルド化。)”
  • 「意図せざる結果」の研究 - 社会学者の研究メモ

    「なぜ社会学には(そして主に社会学において)権力という概念があるのか」とか書いたら今度は社会学者がコメントを書いてくれるかな?とか思いましたが、悪趣味なのでやめときます:-) 最近いまさならながらの「ミクロ-マクロ問題」(社会学にはそういうのがあるのです)について、教科書のこともあって改めてつらつら考えていますが、社会学での「行為-構造」論って、そのポテンシャルがあまり研究に生かされてないですよね。 一番分かりやすくこの図式を利用するモデルが再生産論だと思います。が、場にいらっしゃる研究者の方(このあいだ学会でお会いした方だと思うのですが)が書かれていますが(ブルデューのハビトゥス概念)、確かに再生産なんてことをいうだけならギデンズやブルデューが多くの枚数を割いて、誤解されやすいややこしい概念(「場」とか「構造の二重性」とか)まで作って理論を提起する必要なんてないわけです。 とはいえ、追

    「意図せざる結果」の研究 - 社会学者の研究メモ
  • 経済学と社会学 - 社会学者の研究メモ

    前回のエントリは自分で読んでも不親切なような気がしますので、ちょっと補足しておきます。まず、経済学のモデルが規範的かどうか(効率性という価値基準からの政策決定のモデルをもっぱら意図しているか)ですが、もちろん違うという意見もあるかと思います。最近話題になったレヴィット(S.Levitt)の"Freakonomics"なんか、最初から「経済学にはこんな説明力があるんだよ」ということを示そうとしています。(中絶と犯罪率の関係なんて、すごく社会学的な研究関心です。)新制度派の一人で先にノーベル経済学賞をとっているノースD.Northも、規範的モデルではなく歴史的説明を重んじています。とはいいつつも、他の学問に比べれば格段に規範的だし、「その研究にはどういう政策的含意があるの?」と聞かれる頻度も他の学問よりは多いでしょう。 Freakonomics: A Rogue Economist Explo

    経済学と社会学 - 社会学者の研究メモ
  • アンケート調査にはスキルが必要です - 社会学者の研究メモ

    トロントとは関係ないネタですが。 社会調査や調査教育に携わったことのある人なら、調査票を作ることにはそれなりにスキルが必要だということを知っているはずです。調査スキルを持っていない人が作った調査票はしばしば深刻な欠陥を含んでいて、その結果得られたデータが学術的に全く使えないものになった、ということはよくあります。調査経験が豊富な学者が集まって慎重に検討した調査票にミスが含まれていることがあるくらいですから(私もミスの経験あります)、いわんや調査シロウトは、です。 問題は、アンケート調査という調査手法があまりに一般に普及しているために、学術的データを得る手段としての調査票作成も簡単にできるのではないかと勘違いしてしまう研究者がいる、ということです。ありがちな悲劇のシナリオとして、偉い学者さん(しかし調査経験はあまりない)が科研費をとり、予算消化しきれないので調査票調査をすることにして、そのと

    アンケート調査にはスキルが必要です - 社会学者の研究メモ
  • カナダの社会学の動向 - 社会学者の研究メモ

    ここのところ全く社会学ネタがないので、ひとつ投下。午後にトロント大学の博士課程在学中の人とお茶をする機会がありました。「カナダでは社会学って最近どういうかんじ?」という話もしたので、聞いた内容を軽くまとめておきます。 最近の一番の関心事は「移民」だそうです。カナダは一言で言えば移民国家。トロントは特に移民が多く、人口の半分以上は移民。移民はおおざっぱに言えば、ヨーロッパ→東アジア→東南アジア→中東・南アジアという順にカナダに入ってきている。東アジア移民は現在ではそれなりの地位を築いて、三世以上が社会に溶け込んでいる。そのおかげで東アジアからのニューカマーも比較的すんなりと受け入れが進むそうです。 ところが 911テロの影響からくる差別・警戒感もあって、中東・南アジア(パキスタンなど)からの移民については、なかなか同化が進まない。カナダの移民審査はそれなりに厳しいので、入ってくるのは高学歴

    カナダの社会学の動向 - 社会学者の研究メモ
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    mn_kr 2009/11/09
    “「人・社系博士号持ちの就職ってふつう?」→アメリカと一緒で、研究分野によっては普通に会社に就職できる。社会学についてはアメリカと同じく世間への精力的なアピールが功を奏したらしく需要が高まっている”
  • リベラリズム、コミュニタリアニズムと社会学 - 社会学者の研究メモ

    先日ディスカッサントとして招かれた社会学史学会で、コミュニタリアニズムについて話をする機会があった。おさらいがてら読んでみたのが、菊池『日を甦らせる政治思想:現代コミュニタリアニズム入門 』だったのだが...。私も、著者自身が「日ではコミュニタリアニズムは誤解されている」と述べるとおりであると思うのだが、そうであればなお、批判者を説得できる書き方をした方がよかったのでは、と思う。私自身はどちらかといえばリベラリズムに共感しているが、残念なことにこのによってはあまり説得されなかった。自分が主張したい議論について書くのなら、その議論に真っ向から反対する論者を説得するつもりで行うのが理想である。たとえば市場原理を批判したいのなら、相手はミクロ経済学者である。 日を甦らせる政治思想~現代コミュニタリアニズム入門 (講談社現代新書) 作者: 菊池理夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 200

    リベラリズム、コミュニタリアニズムと社会学 - 社会学者の研究メモ
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    mn_kr 2009/08/02
    “ギデンズはモダニティを「内的準拠性(手段的合理性)」の浸透として捉え...後期モダニティ(late modernity)とよばれる段階では手段的合理性が「飽和」し逆に目的それ自体に価値を置く「ライフ・ポリティクス」が登場”
  • 世代間不公平 - 社会学者の研究メモ

    阪大の大竹先生のブロク経由で購入。改めてやっぱり陰な気分になるなあ。 だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方 作者: 鈴木亘出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2009/01メディア: 単行購入: 6人 クリック: 72回この商品を含むブログ (38件) を見る 第1章 社会保障制度の「危機」はなぜ起きるのか 社会保障制度の危機の質的な原因は、不況でも無駄遣いでもなく少子高齢化 これから迎える団塊世代の退職は危機的状況の入り口でしかない。むしろそのあと、2070年ころにはおよそ労働者1人で高齢者一人を支えることになる。 少子化対策では社会保障制度の危機を克服できない。少子化対策が一番うまくいった推計でも、現役負担の比率が少しだけ緩和されるに過ぎない。 世代別社会保障の損得計算(給付-支払い、税を介した所得移転を含まず)の結果は以下の通り。40

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  • 格差社会論(続き) - 社会学者の研究メモ

    第4章 階層再生産の神話(盛山和夫) 一部ではよく知られている話ですが(そうでもないか?)、経済学者は個人間の格差を問題にするのに対して、社会学者はその昔から世代をまたぐ格差の再生産をこそ問題にしてきた、と言えます。この意味では、経済学者が結果の格差に注目する度合いが強いのに対して、社会学者はチャンスの格差(特に両親の階層による機会の不均等配分)に最初から注目してきたのです。 盛山先生の論文は、階層再生産論の問い、つまり「親の社会階層が子どもの社会階層に受け継がれる度合いは、強くなっているのか?」という問いに答えたものです。内容をまとめておきます。(やっと出てきた社会学者の論文なので、分量二倍増し。) 1955年から1995年までのデータ(SSM)で言えば、階層の再生産の度合い(閉鎖性)はほぼ単線的に弱まっている。 つまり、先の問いへの答えは明確に「No」である、ということです。 じゃあ例

    格差社会論(続き) - 社会学者の研究メモ
    mn_kr
    mn_kr 2009/02/02
    盛山氏によると“1955年から1995年までのデータ(SSM)で言えば、階層の再生産の度合い(閉鎖性)はほぼ単線的に弱まっている。”=親から子への階層位置再生産論(佐藤俊樹)は誤り
  • 公共圏と親密圏(その1) - 社会学者の研究メモ

    The Purchase of Intimacy 作者: Viviana A. Zelizer出版社/メーカー: Princeton Univ Pr発売日: 2007/03/26メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 上記のは、アメリカでは有名ヴィヴィアナ・ゼリザー(Viviana Zelizer)の新しい。ゼリザー*1は「経済現象の社会学的説明」をしたいくつかの業績で知られている。田村祐一郎先生による邦訳もひとつある。 邦訳がないでよく読まれているものには以下のがある。 1987 Pricing the Priceless Child: The Changing of Social Value of Children 1994 The Social Meaning of Money いずれも丁寧な文献資料調査を通じた研究で、定評がある。

    公共圏と親密圏(その1) - 社会学者の研究メモ
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    mn_kr 2009/01/10
    ゼリザーの問題関心は“ 経済活動と、その原理が適用されにくい物事との接点を見つけること&その「やりにくさ」を人々がどうやって乗り越えているかを記述すること”
  • 社会学者の研究メモ

    社会を知るためには (ちくまプリマー新書) 作者:筒井淳也発売日: 2020/09/09メディア: 新書 (前回の続きです。は初学者向けですが、「補論」シリーズはそうではないかもしれないので、ご理解ください。) 社会の各部分の「噛み合わなさ」を考えるとき、私自身は以下のようなリストを思い描いている。(このリストはでは示していない。) 政策・プログラム:意図的な目的に沿った介入。 構造要因:経済(産業・職業・雇用)構造、人口構造、家族構成など。結果的にもたらされている状態。 価値観・態度:人々が望ましいと考える状態。 社会学や近隣分野では、しばしばこれらの要素の絡み合いによって「社会を記述」する。たとえば(第一次)人口転換の先の出生力の低下についていえば、「経済成長の鈍化と産業構造の変化が女性の労働力参加をもたらし、出生力の低下圧力がかかったが、男女均等の価値観の浸透もあり、両立支援政策

    社会学者の研究メモ
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    mn_kr 2008/12/24
    “ふつうは逆淘汰をもたらすのは「情報の非対称性」ですが、私は「いちど代替メディアに移行すると戻らない」という行動が情報の非対称性と同じ働きをしているのでは”
  • 内定取り消し - 社会学者の研究メモ

    大学生の就職内定取り消し相次ぐ 「業績悪化」理由に(asahi.com)大学4年生の就職内定「取り消し」相次ぐ、金融危機で(asahi.com)氷河期世代や、内定がとれていなかった学生からすれば「メシウマ」な状況なのかもしれませんが(いや、今後ますます不利になる証拠なのでそうでもないか?)、この時期にきて取り消しはえげつない。日ではいったん雇用してしまうと解雇しにくいから、早めに切っておこう、ということなんでしょうか。こういう状況下では、就業上の既得権は一部で安心を生みますが、一部で極端な不安を生み出してますね。経済(景気)のインパクトの強さを一番実感するのが、経済のことをまだ分かっていない若者(学生)だ、というのもなんだが歪んでる。いちおうはっておく。知って得する労働法:内定取消し内定の通知をもらったあとに1)必要書類の提出を求められた2)入社日の通知を受けた3)勤務場所の通知や研修の

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    mn_kr 2008/11/01
  • ナショナルチームの応援度 - 社会学者の研究メモ

    うち、テレビがないからリアルタイムではみてないんですが、女子チームの活躍がすごいですねえ。柔道とサッカーなんて、完全に明暗分けましたね。グラフは、各国の人が「自国のスポーツチームが国際試合でいい結果を出したときに誇りに思う」度合いの国別平均値。(データはISSP-2003。)小さくて見えないだろうから、ここからごらんください。日人は結構応援に熱が入る方かな? 西ヨーロッパの国は、たいてい冷めてますね〜。ちなみに日のポイントは韓国よりわずかに高いです(.05で有意)。ちょっと意外?

  • 記憶力じゃなくて思考力を - 社会学者の研究メモ

    電話番号覚えられない!携帯は「バカ量産」の主犯か (J-cast News, 2007/7/18)そりゃー、口半開きにしながら携帯メール打ってたり、自転車に乗りながらメールを書いてたりする若い人みてるとそう思いたくなる気もしますが、「記憶を外部技術に頼るようになると人間はバカになる」というのは、少々勇み足かと。人間の脳というのは結構コンピュータと似ていて(というより人間の脳をまねてコンピュータを作ったのかも)、三つの機能があります。情報を蓄積する機能:物知りってやつですね。PCでいえばハードディスクなんかの記憶媒体。情報を記憶する機能:いわるゆ記憶力ってやつですね。PCでいえばメイン・メモリ?情報を処理する機能:「頭が切れる」ということ。これら三つが同じではないことは明らかでです。記憶力ってのも心理学的にはいろんなタイプがありますが、電話番号を覚えるのが苦手でも、歴史の知識は豊富って学者さ

  • 東大院修了者の進路 - 社会学者の研究メモ

    東大大学院修了者の修了後の状況 平成17年「人文社会系」だと、修了者139人のうち大学教員になれたのが17人。「無職」は55人。「その他」は38人。 よく見方がわかりませんが、きびしい数字に見えます。経済学とかだともっと数字がいいですが...。 運良く(?)大学教員になれて、そんでたいした業績もないのに待遇にぶーぶーいっているような人は、こういう現状も「ネオリベの悪影響」とかいって片付けちゃうんでしょうかね? いずれにしろ若手の研究者のなかには、「もっと競争を!」と思っている人が多いはず。競争社会に対する態度を年齢別にみられるデータってないもんですかね〜。

    東大院修了者の進路 - 社会学者の研究メモ
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