ルネ・シャールという詩人をご存じだろうか。20世紀初頭の南仏に生まれ、第二次世界大戦中にはレジスタンスのリーダーとして活躍したこの人物は、数多くの文化人や芸術家たちを魅了してきた。ところが日本で、あるいは本国フランスにおいても一般になじみがないのは、ひとえにその難解さが災いしている。断章形式を多用した、極限まで圧縮され切り詰められた言葉は、詩というよりも警句に近い。せっかくなのでよく引かれる詩を引用したい。 「結果の轍(わだち)にぐずぐずしていてはならない」 痺(しび)れるような簡潔さである。わかりそうでわからんがどうにもカッコイイ。マクロン大統領をはじめ政治家が好んで引用するのもなんだかうなずける。しかも、これがフランス占領下、対独抵抗運動の最中に書かれたとなれば考えさせるものがある。余分なものを徹底的に排し、時代や文化、理解をも超越する圧倒的な言語。著者もまたその魅力に痺れてしまった一