元外交官で外交交渉に精通している宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、米朝首脳会談における米国の交渉術を「稚拙」と評価する。例えば「切り札を最初に切る」「決定権のない者と交渉する」という具合だ。今後は、戦争ではないものの平和でもない“新常態”に北東アジアは突入すると展望する。 (聞き手 森 永輔) 今回の米朝首脳会談で最も注目したのはどんな点でしょう。 宮家:一つは、交渉の進め方。「ディール・メーカー」「交渉の達人」を自賛するドナルド・トランプ米大統領の外交交渉が自滅したことです。それも北朝鮮のような小国にすら通用しなかった。セオリーを軽視し、無手勝流を通したつけが回ったのです。将来、外交の教科書に失敗事例として載るのではないでしょうか。 宮家邦彦(みやけ・くにひこ)キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1978年外務省入省後、外相秘書官、中東第一課長、日米安保条約課長、在