拾いにきてほしい。あなたが知らずに落としてきたものをひとつずつ拾う私を探しつづけた。あなたよりも未来を生きればいつか拾える。しかしあなたが失われたとき、あなたの未来も失われたのではないか。あなたの過去を歩む限りそれもわからない。 足跡とは、信じるものにしか見えないという点では神学に属する。それは音楽に似ている。一に、音楽とは天体の奏でる響き、ニに体内から湧き出る響き、三に楽器が奏でるものだったという、今日彼のしてくれた話を忘れないうちに書き留めておくが、おそらく足跡は最初から鳴り響いているためにけっして聴こえない天体の響きだった。 「すべてのひとが音痴だったために音階がうまれてしまった」と彼はつづけたが、最近になってやっとそのことがわかるようになりました、という言葉にふるえた。たったひとつの足跡に出会うために、老いてさえひとはどれほどうつむく青年でなければならないのか。やがて音階への抵抗と