写真家の構えるカメラに正対し、しかし両目を閉じて神と交信するような修道僧。あるいは、女子刑務所の扉の穴から厳しいまなざしを室内へと向ける人物。「ふつうの日常」とはかけ離れたように見えて、これらの写真はセンセーショナルというより、観る側に内省的な問いを喚起させます。『王国』という謎めいたタイトルで同シリーズを世に送り出したのは、1931年生まれの写真家、奈良原一高。この『王国』の全体像を紹介する、東京ではじつに56年ぶりの展覧会が東京国立近代美術館で開催中です。そこで今回、日常と幻想のあわいで世界の複雑さを描き出す『遊園地再生事業団』の劇作家・演出家の宮沢章夫さんと展覧会を体験。宮沢流の読み解きと、彼の研究対象でもあるサブカルチャーの視点からの解釈も交え、『王国』に足をふみいれます。 男子修道院と女子刑務所、2つの極限世界で見る「王国」 待ち合わせの東京国立近代美術館に現れた宮沢さんは、カー