東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年半が経過し、自治体には大量の「震災文書」が蓄積されている。どのように保全するかは、それぞれの判断に委ねられているのが実情だ。原発事故で避難指示が出された12市町村への聞き取りを中心に、震災に関連した文書を保全する上での課題などを探った。 大熊町の帰還困難区域にある公共施設には、ほこりのかぶった段ボールが所狭しと積み上げられている。中に入っているのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後に町が作成した公文書。激動の震災対応が記された膨大な資料は、静かに時を重ねている。 「書類はどんどん増える一方、保存場所は限られている。処分しなければならないが、何を残し、何を廃棄すべきか」。町総務課行政係長の小野寺拓也さん(35)は、頭を悩ませる。 町の公文書管理規定では内容に応じて保存期限を1年、3年、5年、10年、永年と定めているが、原発事故前後の業務