被災者が被災者を襲う国---。海外メディアは日本人の礼儀正しさを賞賛したが、いま全国の法廷で、震災に便乗した犯罪の裁判が行われている。法廷で語られた「犯罪」から見えてきたのは---。 取材・文/司法ジャーナリスト 長嶺超輝 余裕で盗めるんじゃないスか 大震災の発生から間もない3月下旬の夜。20~25歳の若い男6人組が部屋に集まっていた。ゲームやDVDなどを楽しんだりしてグダグダ過ごしているうち、そのうちの1人が「被災地で盗みをしているやつがいるらしい。余裕で盗めるんじゃないスか」「行くんなら行かないスか」と言い出した。 深夜3時。明かりが全く無い仙台市若林区の沿岸部に到着した6人は、懐中電灯を手に持ち、津波に遭っても辛うじて建っている2階建ての住宅に侵入。現金1万2000円のほか、液晶テレビ、スノーボード、『ワンピース』『スラムダンク』といった人気漫画など、中古品として転売しやすいものを狙