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デカルトの「我思う故に我あり」は通常、「思考している自分は存在している」と理解される。「自分という意識は確実に存在している」というわけである。当たり前ではないかと思うかもしれない。残念でした。「自分という意識」は脳機能の処理結果であって、それ自体で存在しているわけではない。あなたには自由意志なんてない。あなたの意識や自由意志は脳のプロセスの、ただの傍観者なのである。 冗談のようだがこの話は脳科学を学んだ人には常識の部類である。なにかをしようと意識するよりも身体のほうが先に動くことは実験科学的にわかっているからだ。座っていて「ちょっと立ち上がろうかな」という自由な意識は、実際には立ち上がろうとする身体の神経反応の後から生じている。生理学者ベンジャミン・リベット(Benjamin Libet)が1980年代に明らかにした(参照)。身体運動についての自由意識と思われているものは、身体意識の承認の
グノーシス主義の思想―“父”というフィクション 作者:大田 俊寛春秋社Amazon とてもよいオウム本を書いた大田の処女作で、グノーシス主義にも(『ヴァリス』とか読んだので)興味あったので読んで見た。 オウム本と同じで、とてもすっきりしていて明快。「父親」というものの観念性を元に、その観念性を逆手にとって承認を通じた納得が生まれ、それが社会にも拡大されて社会が生じ、というクーランジュの発想(『古代都市』うちにあるのに読んでないや)から始まって、いろんなグノーシス文献を手際よくまとめて整理していくのは見事。最後は本当の神様をある種のフィクションとして認識しつつも、それを鏡として己を見直し、そして虚構性を敢えて受け入れることで社会性を構築するような発想なんだというところにそれがたどりつくのは、読む側にも「そうか!」という達成感があってすばらしい。そしてこれまでの論者の議論をロマン主義的と切って
面白い本の探し方を教えよう。 図書館限定だが、的中率は100パーセントだ(ソース俺)。面白いかそうでないかは、もちろん好みによる。読書経験やそのときの興味、コンディションによっても左右される。だが、誰かを夢中にさせた本なら、あなたを虜にするかもしれない。手に取る価値は充分にある。 では、「誰かを夢中にさせた本」をどうやって見つけるか?書店の新刊と違って、図書館なら、ちゃんとその跡が残っている。 それは、本の「背」。本のてっぺん(天)から背を眺めてみよう。少し斜めになっているはずだ。本を開くと、表紙に近いページが引っ張られ、背がひしゃげる。本を閉じると、引っ張られたページが戻ろうとする。つまり、一気に読まれた本の背は、ひしゃげたまま戻らなくなる。途中で放り出されたり、中断をくり返したなら、新刊本のように真っ直ぐなまま。 試みに、ちょい昔のベストセラーを見るといい。気の毒なくらいひしゃげている
今年も、東京マラソンではドール社がランナーに向けて数万本のバナナを無料配布する。バナナ=健康食というイメージは、すっかりお馴染みのものとなった。しかし、一方で、その安さから「バナナ=貧乏食」というイメージもぬぐいきれない。どこか滑稽で、安っぽいイメージが付きまとうこの果物。日本人にとって、バナナは身近すぎるあまり、不当に軽んじられているのではないだろうか。『バナナの世界史 歴史を変えた果物の数奇な運命』(太田出版)は、そんなバナナの既成概念を変える良書だ。本書を執筆したのはダン・コッペル。『ナショナルジオグラフィック』などにも寄稿するアメリカ人ジャーナリストだ。 本書が描くバナナの歴史を辿ると、そこに見えてくるのは、アメリカを中心とするグローバル化の歴史だ。熱帯地方からアメリカへのバナナの輸入が増大したのはおよそ150年前の南北戦争が行われていた時代。この当時、蒸気貨物船が普及してきたこと
概要インターネットが人間の脳にどう影響を与えているのか考察した1冊 脳は変化する■脳は可塑性を持つ ・脳は経験や行動に応じて、絶えず変化をする部位 ・テクノロジーによっても影響を受け変化する ■知的テクノロジーが脳への影響を大きく与える ・知的テクノロジー:知的能力の拡張や支援に用いられる道具(そろばん、地図など) ・長期的かつ最大の力を及ぼすのが知的テクノロジー ■道具は目的を達成する手段だけはなく、人に影響を与えている ・盲目になった人が点字を読めるようになると、脳内には変化が起きる ・本によって読書をする人は増え、図書館まで建設されるようになった ネットによる影響■思考力の低下 ・本を読むときと本を模したテクストを読むときでは脳の働き方が違う ・本を読むときは脳の中で豊かな結合が生じる ・本を模したネットでは、結合が起こらず、内容を深読みできていない ■集中力が散漫 ・直感的なテクス
『パックス・モンゴリカ チンギス・ハンがつくった新世界』を読んだ。 パックス・モンゴリカ―チンギス・ハンがつくった新世界 ジャック ウェザーフォード,Jack Weatherford,星川 淳,横堀 冨佐子 日本放送出版協会 売り上げランキング : 517189 Amazonで詳しく見る by AZlink ガッチガチの陰謀論者ではなくとも、歴史において「本当にそんなことあったの?」と思わざるを得ない出来事というものがある。本書を読み終えて、チンギス・ハンによるモンゴル帝国の構築というのはその最たるものだという思いを強くした。もう一つ挙げるとすると、アポロが月に降り立ったことだよねガピーン。 チンギス・ハンというひとりの男の奇跡の物語がそこにはある。 p. 15 子ども時分は犬をこわがる泣き虫だった。弓と相撲は弟のほうが上手で、親分風を吹かせる異母兄にいじめられていた。 このひ弱な少年*
オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義 作者: 大田俊寛出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2011/03メディア: 単行本購入: 61人 クリック: 1,271回この商品を含むブログ (25件) を見る 先日、オウム関係者の死刑判決で、遺族は「なぜ」がわからず不満顔だったという報道について、ぼくはなぜなどと問うべきではない、どうせ答えなんか出ないんだから、という話を書いた。が、本書はその「なぜ」をまがりなりにも分析して一応の答を出した本であり、またオウム事件に対してこれまでまともな対応を見せてこなかった宗教学の学者が、そうした現状を真摯に反省して宗教学的な取り組みからオウムを切ってみせた点でもきわめてえらい本。 読んでいて、まさに上で出てきたリアリー『神経政治学』(そしてぼくのあとがき!)が引用されていてびっくりしたんだが、オウムがどんな宗教・思想的な系譜につながるのかを明
ポール・デイヴィス著 林一訳 草思社文庫(2011/12). 2003 年刊行のハードカバー「タイムマシンをつくろう」の文庫化. 理論物理学者が書いた真面目な本.大学で物理を勉強した,あるいはさせられた方は,この本の最後の「なぜタイムとラベルを研究するのか」から読み始めるのがいいかもしれない.シュレディンガーの猫のような「思考実験」と言われれば納得だ. 現在,タイムトラベルの研究は理論物理学のコミュニティの中で家内制工業めいたものまでにはなって来ているということである.でも,過去に遡って少女時代の母親を殺したらどうなるかをまじめに議論するあたり,SF との境界はあいまいだなというのが実感. ワームホールをタイムトンネルとするタイムマシンの設計図も載っているが,このカバーイラストのような愛嬌のある代物ではなく,巨大加速器のイメージに近い. 定年してつまならくなったことは,こうしたことを世間話
イスラームと科学 作者: パルヴェーズフッドボーイ,植木不等式出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2012/01/31メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 346回この商品を含むブログ (6件) を見る イスラム圏の科学はひどい状況にある。中世には、停滞するヨーロッパを尻目に世界最先端だった。でも宗教がそこに介入し、物理法則なども神の意志にすぎないとされ、科学を研究するより、神の意志をコーラン解釈から読み取ることが優先された。そしていまや、一部イスラム圏の「科学」と教育の相当部分は、西洋科学をイスラム経典解釈にこじつけてにこじつけて「イスラム的科学」なるものをでっちあげる行為に堕している―― こうした状況を、世界的な物理学者でイスラム教徒である著者は、深く憂慮し、イスラム社会の大きな停滞要因だと指摘する。だが本書は、イスラム教という宗教を批判するのではない。宗教と科学や理性の領域と
福島・いわき市出身、27歳の若き社会学者。2006年に福島でフィールドワークをスタートし、震災前から地元の声を拾い続ける。 歴史的経緯と社会学的考察を踏まえ、この男は“フクシマ”を、原発問題をどう見るのか──地元民として、そして社会学者として。 ——3・11前から書かれた著書『「フクシマ」論』が、福島の原発事故を受けて反響を呼んでいます。今、この本が社会の中でどのような機能を果たしてほしいと思っていますか? 「原発に対して、周辺住民は『東京電力が大丈夫と言っているから大丈夫だろう』というような、ある種の信仰のようなものを持っていた。それを拙著の中では“信心”と表現しています。その信心の対象が、新たな何かに移り変わるだけで物事が処理されてしまうことが、いちばん危険。具体的に言うと『忘却して、反復する』ということです。その構造を繰り返さないために、読まれてほしいなと思っています。それから僕は、
人生とは何か、という問いに対する答はいろいろあるだろうが、私の答は中学生のころパスカルの『パンセ』を読んだときから同じだ。それは気晴らし(divertissement)である。これは適切な訳語がないが、「人生に意味がないという事実を忘れるために常に何かをして気をまぎらわせること」といった意味である。 パスカルは、兎狩りに行く人を例にとってこれを説明している。狩りは兎を手に入れる手段としては不合理だが、人々の目的は兎をとることではなく、狩りに夢中になって気晴らし(暇つぶし)をすることなのだ。これをパスカルは自己欺瞞と考え、神の中に意味を見出そうとしたが、その著書『キリスト教弁証論』は未完に終わり、断章だけが残された。 それ以来、退屈や暇つぶしについての考察は、西洋哲学の重要なテーマである。ニーチェは退屈をニヒリズムと呼び、それを克服する「超人」を構想した。他方、マルクスは「必然の国」の彼方に
2012/2/249:50 山形浩生は何を語ってきたか(後編) 山形浩生×荻上チキ ■大文字の固有名詞で語る時代は終わった 荻上 最近は、SFの分野などでも、量産されている作品群の中で良質なものを読みなおそう、発掘していこうという動きが続いています。どの分野でも、読むべき本の再紹介みたいなまとめは、「○○がすごい」系のムックから2ちゃんのまとめに至るまで、あれこれ出ていますから。 芹沢一也はかつてのあり方を、「オレの父ちゃん強いんだぞ競争」と呼んでいました(笑)。誰の翻訳者であるのか、どんな大文字の哲学者を「召喚」できるのかという、イタコ芸のような、あるいはカードゲームのような文法がありました。「オレのターン、カント!」「こざかしい、デリダ!」みたいな。最近はそうした文法も見なくなってきた。非常にいいことだと思います。 山形 カントが偉かった時代は2世紀ぐらい続いたんでしょうけど、今、特に
音楽とは何か? 音楽を「音楽」だと認識できるのは、なぜか? 音楽を「美しい」と感じたり、心を動かされるのは、なぜか? 音楽好きなら、誰でも一度は思ったことを、徹底的に調べ上げる。そして、究極の問いかけ、「音楽は普遍的なものか」に対して真正面から答えている―――答えは"No"なのだが、そこまでのプロセスがすごい。 類書として「響きの科楽」を読んでいるが、こちらのほうが入りやすい。リズムや平均律、協和音、周波数といった音楽に関するトピックを取り上げ、音楽と快楽のあいだにあるものを浮かび上がらせる。 いっぽう「音楽の科学」はかなり踏み込んでいる。音楽の定義から、楽曲と使う音の恣意性、「良い」メロディの考察、音楽のゲシュタルト原理、協和・不協和音、リズムと旋律、音色と楽器―――ほぼ全方位的に展開される。さらに、音楽を聴くときの脳の活性状態についての研究成果と、音楽に「ジャンル」がある理由、「音楽=
人間はもちろんのこと、ヒラメとカレイのように右型の種と左型の種の両方がいるような生物でも、脊椎動物なら必ず左側に心臓があると言えるそうだ。ところが無脊椎動物には、大胆にもそっくりそのまま左右を逆転してしまう仰天の進化を遂げた生物がいる。それが巻き貝である。 サザエ、タニシ、カタツムリなど、私たちの周りにいる巻き貝はほとんどが右巻きである。しかしカタツムリなど一部の種においては、少数ながらも比較的たくさんの分類群で左巻きの種が見つかっているのだ。本書は、そんな生き物たちの「右と左」に関する進化の物語。主役はカタツムリとヘビだ。 著者は、ある日ふとしたことから仮説を思い立つ。左巻きのカタツムリが誕生したのは、左巻きよりも右巻きのカタツムリを食べるのに熟練したもの ― つまり、右利きの捕食者がいるからなのではないだろうか。 その後、カタツムリばかりを食べるというイワサキヘダカヘビの存在を聞きつけ
農耕起源の人類史 (地球研ライブラリー 6) 作者:ピーター・ベルウッド京都大学学術出版会Amazon 原題は「First Farmers: The Origins of Agricultural Societies」農耕の起源と拡散のこれまでの考古学的な知見を総合化して示し,遺伝子,言語学からのデータをあわせて提示するという壮大なもの.コリン・レンフルーやジャレド・ダイアモンドも推薦の辞を寄せており,モニュメント的な大著だ.何しろ参考文献だけでA4判の本書で小さなポイントを使って57ページを占めている. 読書体験は予想されるとおり,分野をまたがる統合,巨大な仕事を追体験する圧倒的なものだ.本書の醍醐味はまさにこの巨大な仕事の追体験である.圧倒的な世界中のデータの統合から浮かび上がるのは,農耕の起源とともに農耕文化とその担い手の言語が急速に拡散し,遺伝子は勾配を持って混じり合っていくパター
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