東京スカイツリーを見上げ、考えた。634メートルの影は、どこまで伸びているのだろう。それが時計の針のように、東京の下町を1日かけて巡るのを思い浮かべたら、影を踏み踏み、街を歩いてみたくなった。影の先端の落ちる街で、ツリーを仰ぎ、暮らしている人々の物語に出合いにいこう。【小国綾子】 とはいえ、困った。影の先端は今、どこにある? 三角関数を使ってみた。ツリーの高さ634メートルと、太陽を仰ぎ見る角度から、影の長さを計算する。そうして見当をつけ、午前9時過ぎ、まずは見晴らしの良い隅田川土手(台東区浅草)に出かけた。 あった! 土手沿いの道を、輪郭のぼやけた十数メートル幅の影が横切っている。川向こうのツリーを仰ぎ見れば、第1展望台と第2展望台の間に太陽が隠れている。間違いない。これがツリーの影だ。輪郭は情けないくらいぼんやりしている。遠い物体の影ってこんなにぼやけるものなのか。 通勤中の自転車が、