例年に比して暑さが増す今年の夏、また広島と長崎に原子爆弾が投下された8月6日、9日を迎える。原子爆弾で一瞬にして命を奪われた広島の10万人余と長崎の7万人余の犠牲と現在も後遺症に苦しむ被爆者の身上に思いを馳(は)せるとともに、核兵器の恐ろしさをいま一度思い起こす日としたい。 目に付く式典の形骸化 広島の平和記念公園ではきょう、原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式が挙行されるが、気に掛かる面がある。毎年ほぼ同様の手順で式が進められ、しかも同じようなメッセージが披露されるなど近年は形骸化が目に付く。原爆投下から80年近い歳月が経過し、被爆者の高齢化や被爆体験の風化が進んでいることも気掛かりだ。 例えば被爆者の肉声やビデオメッセージの紹介、あるいは投下時の映像資料を活用するなど新たな試みに挑戦することで、式典が原爆による被害の凄(すさ)まじさを現在の人々、特に若い世代に正しく伝えられる機会となるよう