サンプリングに代表されるように常に新たな音楽を吸収したり、《トラップ》の連続したハイハットのように新たな表現を発明しては、アーティスト達は切磋琢磨し続けている。また、地域やスタイルを標榜して活動するラッパーが主流だった昔に比べ、様々なジャンルを融合させ、多様なタイプのラップをするアーティストは既に珍しくない。つまり、ラップにおけるジャンルの定義付けは年々難しくなっている。 それでもなお、ジャンルの定義とアップデートは必要だ。様々なスタイルが混ざっているからこそ、我々は音楽について話す際、「ドラムの音は《トラップ》そのものだが、《グランジ》のような疾走感あるテンポ」といったように、サブジャンルの定義に頼ってコミュニケーションをしているからだ。そして常にトレンドが更新されつづけるラップ・シーンにおいて、そのサブジャンルの定義を書き出す行為は、歴史の振り返り作業でもある。