大学に入りたてのころ、たしか、映画概論、といった感じの名前がついた授業があった。映像専攻だったので、それにまつわることの歴史を学ぶのは自然な流れだった。 初回では、馬が走り続けるゾートロープの映像から始まり、エジソンが作ったというドレスの袖や裾をぶわぶわと振り回して踊る人の映像、リュミエール兄弟の「工場の出口」など、人類の映像史上最初期の作品を見た。先生は、これが映画のはじまりです、と淡々とした調子で、私たちのほうをあまり見ずに話した。この時、私の内面は少しずつ波立っていた。面白いのか面白くないのかの判断がまったくつかない。すごく面白い気もするけど全然面白くない気もする。 授業はつつがなく回を重ねた。次に「戦艦ポチョムキン」が来た。これはとても印象に残っている。監督のエイゼンシュテインは演出の手法として、例えば「とても悲しい」という感情を表現する演技を俳優に求める時「できる限り顔を縦に伸ば