ある作品について、長く考え続けることができるとき、その作品にはある種の居心地のよさがある。そこに描かれているのがどんなに凄惨で残酷な世界であれ、あるいは甘すぎる砂糖菓子のような世界であれ、毎日のように訪れて、目の前に圧倒的な違和を感じながら、不思議と落ち着く、安全というよりは、安全ではないことを受け入れることができる、そういう居心地が見つかる作品はけして多くない。わたしにとって濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」には、居心地のよさがある。三時間以上あるこの作品の時間に、また浸りたいと思う。この居心地が、どのような考えをもたらすのかはっきりわかっているわけではないけれど、わたしの考えはどうやらこの作品の隅に居座ることを決めたらしいので(スピッツの古い歌みたいに)、しばらくの間、思いつくことを書き留めていこうと思う。「覚え書き」というのは謙遜でも何でもなく、ワーニャ伯父さんにも想像のつかない、