村上春樹さんの話は日本と東アジアの国々との問題に展開していった。 × × ―デビュー作「風の歌を聴け」の「僕」たちが集まるバーのバーテンは中国人。最初の短編集の名が「中国行きのスロウ・ボート」。「スプートニクの恋人」では在日韓国人の女性が重要な役割で登場する。村上春樹さんほど、東アジアと日本の関係を考えて書き続ける作家はいない。近年の東アジアの状況をどのように考えていますか? 村上 東アジア文化圏にはとても大きな可能性があります。マーケットとしても、すごく大きくて良質なマーケットになるはずです。いがみ合っていても何も良いことはありません。 ▽地殻変動 ―歴史認識の問題についてはどう思いますか? 村上 今、東アジアには大きな地殻変動が起きています。日本が経済大国で、中国も韓国も途上国という時には、その関係の中でいろんな問題が抑え込まれていました。ところが中国、韓国の国力が上がって、