カラクリ明かす哀しさ 表紙は著者の顔面アップ写真。アーティスト村上隆がこちらを見ている。睨(にら)んでいるような、人を蔑(さげす)んでいるような。これもひとつのアートなのだろうか。 読んでみると、内容は荒々しいタッチのビジネス論である。何しろ、「絵画は紙や布に絵の具を乗せた痕跡です。痕跡自体に価値なんてありません」と言い切っているのだ。 彼によれば、作品の価値は市場で生まれる。世界の中心はアメリカで、そこでは金持ちたちが「何十万ドルでこの作品を買った俺って、おもしろいヤツだろう?」などと自慢話のネタとして使える作品が高値で取引されるらしい。作品性より話題性。「才能よりサブタイトル」。彼がオタク文化を作品化して成功(オークションで1作品が1億円で落札)したのも、原爆や敗戦と結び付け、「こういう土壌から発生していますよ」と話題にしやすい「文脈」を提示したからだという。「会社の業績が悪かろうがよ