「永遠回帰」は、ニーチェの思想の中で最もわかりにくいものだというふうに、少なくともニーチェと同時代のヨーロッパ人によって受け取られてきたし、現在のヨーロッパ人の多数にとっても事情は変わらないだろうと思う。時間が永遠に回帰するなどという言い分は、時間には始まりがあり、したがって終りもあると考えるキリスト教文化圏の人々にとって理解しがたい考えに違いない。 しかし、東洋人にとっては、少なくとも我々日本人を含めて仏教的世界観になじんだものにとって、この考え方は、そんなにわかりにくいものではない。いや、かえって馴染みのある考え方ともいえる。というのも、仏教的世界観とそのもととなったヒンドゥー的な世界観にあっては、人間を含めて一切の生き物は輪廻転生するのであるし、世界は直線的な時間ではなく、円環的な時間にそって展開するというふうに考えるからである。永遠回帰とは、その円環的な時間の展開を別の言葉でいいか