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ブックマーク / blog.goo.ne.jp/augustrait (3)

  • 『にんじん』ジュール・ルナール

    子どもを見れば,その家庭の姿が窺い知れるというものだ.親は子の鑑であると同時に,子は家庭の姿を映し出す鑑なのである.そして,心のよりどころとなるべき家庭から不当な扱いを受けている子どもがいるとすれば,その子にとっての安全基地は,何ものかによって奪われているとみなければならない.その外敵ならぬ内敵と毎日対峙しなければならない子どもの悲嘆は,彼にとって絶望的なものであることだろう.母親の口汚い痛罵に耐え,自分の失敗を面白がって笑いものにする機会を常に窺うきょうだいに隙をみせぬよう注意を払い,何事にも眉をしかめるだけで無言な父親に助けを求めても詮はない.それを知りながら,自分の価値を否定され続ける状況をしのぐ日々.そのような日常に子どもは何を思いどう過ごしているのか.世界を眺める子どもの目はどういったものなのか. ジュール・ルナール(Jules Renard)は,もともと文学活動の表現を詩に求め

    『にんじん』ジュール・ルナール
  • 『看護覚え書』フローレンス・ナイチンゲール

    専門職の内部と質は,「知識」「技能」「価値観」から構成される.看護の臨床と学問の貢献に尽力したフローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)の著作の中でも,書は看護養成学校のバイブルとして継承され続けてきた.ナイチンゲールは,看護技術の体系化とともに,当時としては高度な分野で労働する“職業婦人”としての看護婦*1 の地位向上に全霊をあげた. 看護は人類の「生の営み」を支え続けた実践的な技術であるのに,その歴史が原理的,理論的に大きな声を社会に向けて発することはなかった.ナイチンゲールが長年の看護臨床経験をもとに,看護学や後人の陶冶に努めたかと思えばそうではなく,現役の看護婦として活躍したのはわずか3年間である.その後,150とも200ともいわれる著作と1万2,000もの書簡やメモを残し,看護の側面にとどまらず,病院,建築,福祉,そして統計データに基づく事実認識

    『看護覚え書』フローレンス・ナイチンゲール
  • 『チャップリン自伝』チャーリー・チャップリン

    だぶだぶのズボン,山高帽,不恰好なをはいて,ステッキを振りながらおどけながら歩いていく.その男は滑稽に見えたが,奇抜なメイクと衣装の下に,知的で物静かな瞳があった.生涯で81映画に携わり,大半が自作自演だった.エッサネイ時代(1915-1916年)からミューチュアル時代(1916-917年)の3年間で撮った映画,実に26.そして,喜劇を演じる内部に,妥協のない美学があった. 1920年頃,チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)は女性の易者に運勢を見てもらったことがある.診断の結果は次のようなものだった.まず,大金持ちになる.次に,3回結婚するだろう.そして子どもは3人,寿命は82歳で,気管支肺炎で尽きるだろう.チャップリンは1978年クリスマス・イヴの夜,夫人と子ども7人に看取られて静かに息を引き取った.彼は4回結婚して,子どもを9人設けた.亡くなったのは87歳

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