上方古典落語のひとつに『算段の平兵衛』という噺がある。 この噺、民衆や噺家からの評価があまり芳しくなく、支持を得ることがないまま時の流れとともに演じ手を失い忘れ去られた噺だったのだが、今年鬼籍に入った稀代の天才落語家であり上方落語復興の立役者、三代目桂米朝によって引き揚げられ現代に復活した。 なぜ『算段の平兵衛』は不人気だったのか。それほど酷い噺だったのか。その噺の概要は、簡単に記すと以下である。 庄屋にはお花という妾がおり秘密で囲っていたのだが、その存在を嫉妬深い妻に知られてしまい、やむなくお花に手切れ金を渡して別れることになる。 さらにお花を村から追い出すことを避けるために、人間関係の仲裁や秘密の問題解決に定評があることから「算段の平兵衛」と呼ばれていた男にお花を娶らせた。 しかし、平兵衛はお花が渡された手切れ金をサイコロ博打などに費やしたため、夫婦はすぐに着るものに困り食うに事欠く貧
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