辺りはだだっ広い砂利の河原。寒風に晒されるススキが辺りの光景を一層寒々としたものにしている。この河原には捨てられたゴールデンレトリバーが住みついているとかで、湿った土の上に、大きな犬の足跡が残されている。 「人間を見ると嬉しくて走ってくるからびっくりしないでくださいね」。同行した地元の人が教えてくれたものの、吹きっさらしの河原に犬の姿はない。風が強く、暮れかけた冬の川辺は、立っているだけで震えが止まらないほどだ。河原の砂利の上には二本、くっきりとタイヤの痕が残されている。その痕は、そのまま川の中に続いている。