「成功」した事例の共通要素を抽出して「こうすれば成功する!」という方法は、楽にできるしわかりやすいので、自己啓発書やコンサルなんかがよく使いたがる。しかしその「成功」は、同じ方法をとった大勢の中から偶然成功したもの、つまりジャンケン大会やビンゴ大会の優勝者に、その勝利の秘訣を聴くようなものだったりすることが多い。 多くの人が自分の成功の理由と方法を喧伝したがるのに対して、「なぜ失敗したか」は往々にして闇に葬り去られる。失敗とは恥であり、世間に晒される前に隠したくなるものであるからだ。だからこそ「なぜ失敗してしまったのか」の事例研究の価値は高い。大東亜戦争という日本の巨大な「失敗」に目を向けたのが『失敗の本質』という名著である。 失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 199