制度的・観念的な家族概念とは異なり、「居住の共同」と「家計の共同」という二重の共同性から定義される世帯概念は、人々の共同生活実践を客観的に把握するための経済的・実体的な単位として重要な役割を果たしてきた。しかし同時に、世帯概念は家族概念と相互規定的に運用されることで、様々な共同生活実践を同居家族の範囲へと切り縮めてしまい、現代の家族をめぐる多様な状況を正しく把握することができなくなっている。そこで本稿では、世帯と家計の再検討を通じて、消費生活実態としての世帯概念の現代的な再編を試みる。具体的には、家族社会学における世帯概念の導入と展開を辿ることで、世帯が同居家族と同一視され、それ以外の共同生活実践が単なる個人の集合へ解体される過程を見ていく。他方で、家計経済学においても、理論的には特殊な「家計の家族的共同」を「家計の共同」の一般モデルと置くことで、家族以外の共同生活実践を理論的射程から外し