まず、初期の Constructing Quarkは科学知識社会学の代表的な研究の一つです。ピッカリング自身が物理学の教育を受けた人だけあって、この本の素粒子物理学の歴史叙述は定評があります。 その後、1990年代には科学哲学、科学史、科学社会学にまたがる「実践的転回」と呼ばれる運動の旗ふりをつとめました(実践的転回というのは、簡単にいえば、科学を対象とした研究において、科学理論が主役ではなく、科学者の日々の営み(実践)こそが主役となるべきだという考え方です)。主著のMangle of Practiceはこのころに書かれたものですが、実験の現場における科学者の行為と、それに対する実験器具の抵抗(要するに思い通りの結果を出してくれないこと)と、その他の周辺のファクターが、相互にぶつかりあい、事前には予想不可能な形をおりなしていく、という科学の実践観を事例研究に基づいて提示します(タイトルに言