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ブックマーク / yuiami.hatenablog.com (14)

  • 外的世界の証明(抄) - まとまり日記

    授業で使うためにムーアの有名な論文「外的世界の証明」(pdfファイル)のキモとなるところの翻訳を作ったのでご笑覧ください。 例えば、わたしは今、二の人間の手があることを証明できる。どうやってか。それは二つの手を上げて、右手でジェスチャーをしながら「ここに一、手がある」と言い、そして左手でジェスチャーをしながら「ここにもう一つある」と付け足すことによってである。そしてもし、こうすること、まさにこのことによって外界の事物の存在を証明したのならば、わたしが同じことを数々の別の仕方によって行うことができることをみなさんは理解するだろう。ゆえに例をこれ以上増やす必要はない。 しかしわたしはたったいま人間の手がそのとき存在したことを証明したのだろうか。わたしはそうだと言いたい。そしてわたしが与えた証明は完全に厳密なものだと。そして何についてもこれよりも優れたそしてより厳密な証明を与えることはおそら

    外的世界の証明(抄) - まとまり日記
  • 瀧本哲史著『ミライの授業』のメンデルの記述は大幅に間違っている - まとまり日記

    以下は瀧哲史著『ミライの授業』のメンデルの項について準備していた文章である(文章については公開に当たってかなり手を入れているが、全体の構成については七月の段階でできていた)。そこでは同書の誤りについて説明し、そうした誤りがかなり簡単に気づけるものなので、著者にも幾ばくかの責任があることを述べている。 * 既報の通り著者の瀧氏は逝去された。また著者に近しい人の回想によると、著者が書を書いたのは深刻な病気からいったん回復した後のことであったようだ。この意味で以下で述べる誤りの責任についてはある程度の情状酌量ができるかもしれない。 しかしそうであっても誤りは誤りであり、可能であれば何らかの形で誤りを訂正してもらうのが適当だろう。この文章を公にすることにしたゆえんである。 高校生に出張授業をする準備のために『ミライの授業』 ミライの授業 作者: 瀧哲史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2

    瀧本哲史著『ミライの授業』のメンデルの記述は大幅に間違っている - まとまり日記
  • 21世紀の哲学教科書 - まとまり日記

    授業準備のために最近 Philosophy: Asking Questions - Seeking Answers 作者: Stephen Stich,Tom Donaldson出版社/メーカー: Oxford Univ Pr発売日: 2018/08/10メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見るを買ってめくっているが(H/T @kasa12345)、細かいところで工夫があって、21世紀の哲学教科書という感じがする。具体的には以下のような点で工夫を感じた。 冒頭で「哲学は我々の生活に関係している」として、菜主義の例が挙げられている。 また冒頭2ページ目で、このは西洋哲学しか扱わないことを宣言し、のみならず中国哲学・インド哲学などの世界の哲学の入門書を紹介している。 エリーザベト3世(ボヘミアのエリザベス)やスーザン・ウルフ、ルース・ベネディクトのような女性の哲学者・研究者を比

    21世紀の哲学教科書 - まとまり日記
  • 不満研究事件・「『わが闘争』論文」について - まとまり日記

    さて以前のエントリで述べた不満研究事件だが、このプロジェクトのメンバーのプラックローズとリンゼイが書いたが翻訳されるという(原著についてもわたしは未読)。このが話題になる理由の一つには彼らがこの事件を起こしたからだろう。しかしわたしは、少なくとも不満研究事件に関するかぎり、彼らの主張の解釈にはかなり注意が必要で、きちんとした検討なしに額面通りうけとることはできないと考えている。このエントリではそれを一つの偽論文を題材にして述べる。 なおこのエントリは長くなってしまった(一万字を越えた)ので目次を付けた。 不満研究事件と偽論文の概要 偽論文は『わが闘争』とどこまで似ているか 偽論文が採択されたことはどこまで問題か 倫理的問題? 政治的アジテーション? 結論 不満研究事件と偽論文の概要 事件全体については詳しくは以前のエントリを見てほしいが、簡単に説明すると上の二人にボゴシアンを加えた三人

    不満研究事件・「『わが闘争』論文」について - まとまり日記
    fromAmbertoZen
    fromAmbertoZen 2022/12/10
    「少なくとも不満研究事件に関するかぎり、彼ら(プラックローズ、リンゼイら)の主張の解釈にはかなり注意が必要で、きちんとした検討なしに額面通りうけとることはできない」
  • 不平不満研究事件について - まとまり日記

    不平不満研究事件(「フェミニズム版ソーカル事件」と呼ばれることもある)について、ラゲルスペッツ(Lagerspetz)という社会学者の論文を読んだので、それを簡単に紹介したい*1。 事件の概要 不平不満研究事件(The Grievance Studies Affair)とは、2018年にピーター・ボゴシアン、ジェームス・リンジー、ヘレン・プラックローズの三人の研究者(以下BLP)が、彼らが「不平不満研究」(Grievance Studies)と呼ぶものを対象にしていくつかの学術雑誌に偽論文を投稿し、その一部が採択されたというものだ。 三人の説明では、「不平不満研究」とは具体的にはジェンダー研究・批判的人種理論・ポストコロニアル理論や、他の「〇〇理論」と呼ばれるものに基づく分野(人文系だけでなく、社会学や人類学を含めた社会科学にも存在する)のことを指す。これを彼らがなぜ「不平不満研究」と呼ぶ

    不平不満研究事件について - まとまり日記
  • 『現代思想』誌「進化論の現在」は看板倒れ - まとまり日記

    『現代思想』誌2021年10月号は「現代思想 2021年10月号 特集=進化論の現在 ―ポスト・ヒューマン時代の人類と地球の未来―」と題された特集だった。わたしはこの特集全体の企画意図に問題があると考えるので、手短に述べたい。 わたしの不満は一言で言うと「この号の中身は『進化論の現在』という題名と釣り合っていない、とくにこの題名で生物学の哲学の成果をほぼ無視するのは問題ではないか」ということだ。 まず前半からいこう。哲学・思想系の雑誌が「進化論の現在」という特集を組むときにどういうことを扱うべきか。もちろん決まったルールがあるわけではないが、次のようなトピックが扱われると考えるのが自然だろう: 進化論(進化生物学)の研究の現状 進化論の種々の側面についての哲学的論争の現状(たとえばやや古い話だがここで触れられているような議論) 進化論からの哲学研究へのインプリケーション(たとえば意識の進化

    『現代思想』誌「進化論の現在」は看板倒れ - まとまり日記
  • 酸素の発見についての四冊 - まとまり日記

    「科学史」の授業のために酸素の発見史についていくつか読んだので、その感想。ただし酸素の発見史に一冊すべて充てているは日語ではないと思うので、以下の感想は「化学史の入門書の中で酸素の発見史の部分に関するもの」ということになる。 化学史への招待 作者: 化学史学会出版社/メーカー: オーム社発売日: 2019/01/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 今回紹介するの中ではこれが一番勧められる。このは日の化学史家が化学史のトピックについて書いたものをまとめたもので、酸素の発見史は一章を充てられている。発見史の主要登場人物(シェーレ、プリーストリ、ラヴォアジエ)には一節以上割かれており、発見史の全体像を知る上ですぐれている(ただし各節は異なる化学史家によって書かれているので内容の重複はある)。またジェンダーと化学史の関わりとしてラヴォアジエ夫人にも一節を割か

    酸素の発見についての四冊 - まとまり日記
  • 科学哲学には何が期待されていて何ができていないのか - まとまり日記

    『ダーウィンと進化論の哲学 (科学哲学の展開)』について評論家の山形浩生さんから厳しい書評をいただいた(リンク)。 すでに他の方が指摘されている通り、あの書評には個々の論文について指摘された「問題点」について事実誤認や的はずれのところがある。他の論文についてその著者のかたに譲るとして、わたしの論文について言うと、やまがたさんの一つのポイントは議論が哲学的ではないということだ。 わたしにとってこれは意外な点だった。というのは論文の謝辞で示唆したとおり、あのプロジェクトは元々留学中のゼミで発表したものが素材になっており、それがああいった形で論文になるには仲間の哲学者からの「おまえこのプロジェクト面白いよ」という励ましが必要だったからである。また、前のエントリで紹介したように「哲学=別の手段による科学の継続」、つまり哲学は「自然についてのわれわれの知識の増大」という目標を科学と共有しているという

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  • 研究資金の減少は、税金の無駄使いを加速している - まとまり日記

    Scientific AmericanのポッドキャストでRichard Harrisのインタビューをしていた。彼はNPRの科学リポーター(science correspondent)で、Rigor Mortis Rigor Mortis: How Sloppy Science Creates Worthless Cures, Crushes Hope, and Wastes Billions 作者: Richard Harris出版社/メーカー: Basic Books発売日: 2018/05/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見るというがペーパーバックになったことを記念して行われた*1。このでHarrisは米国のmedical scienceが置かれている状況の問題点を示している。 彼が指摘する問題点を一言で言うと「研究資金の実質的減少に伴って、研究の質が低下し、結

    研究資金の減少は、税金の無駄使いを加速している - まとまり日記
  • 家事分担の進化ゲーム - まとまり日記

    家事分担は結婚している夫婦の間で頻繁に問題になる事柄の一つだ。家事の負担は多くの場合に偏っており、はそれに不満を感じていることが多い。これは女性がフルタイムの仕事を持つことが例外ではなくなった現在でもそうだ。どうしたこういうことが生じるのだろうか。大浦宏邦氏の著書 社会科学者のための進化ゲーム理論―基礎から応用まで 作者: 大浦宏邦出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2008/09/25メディア: 単行 クリック: 12回この商品を含むブログ (6件) を見るは以下の進化ゲームを使ってどうして一方に家事負担が偏りがちなのか説明している。 家事分担ゲームの概要 このゲームの前提として、家事をすることの利益をb、家事をすることのコストをcとする。そして夫婦両方が家事をしたときのコストはそれぞれc/2となることとする。するとこの場合の利得表は以下のようになる。 夫\ 家事する 家事しな

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  • 哲学専攻は経済的に見合う投資である - まとまり日記

    と主張する記事があったので紹介。 この記事では、PayScaleというサイトの調査を元に、アメリカの大学の学部卒業生を対象にして(したがって大学院に入学した人は入っていない)、専攻によって卒業後の収入がどのくらいになるか、また高卒で社会人になった場合と比べてどのくらい収入が増えるかを調べた。その結果が以下の表である。 専攻 キャリア前半収入(ドル) キャリア中盤収入 生涯収入増加 アート 36,100 57,100 315,500 ドラマ 35,600 56,300 302,400 英文 38,700 65,200 444,700 仏文 40,900 66,700 470,900 歴史 39,700 71,000 537,800 哲学 41,700 78,300 658,900 これを見ると、「収入に結びつかない」と言われている人文系の専攻でも、高卒の人に比べると30万ドル以上の非常に大き

    哲学専攻は経済的に見合う投資である - まとまり日記
  • 才能が必要と考えられている分野ほど女性研究者の比率が低い - まとまり日記

    という論文が「サイエンス」誌に掲載された(リンク)。 STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)といういわゆる「理系」の分野では、研究者に女性が占める割合が低いといわれてきた。また社会科学系・人文系の分野でも女性研究者の比率が少ない分野がある(経済学や哲学)。この原因をめぐってはさまざまな議論がなされてきたが、この論文はさまざまな仮説を比較して、〈「ある分野で研究者として成功するには才能が重要である」とその分野の研究者が考えている程度〉が、その分野のPh.D.の中に女性が占めている割合と相関しており、その分散をよく説明していることを主張する。これがなぜ重要かというと、多くの人はこれと同時に「女性は知的才能において男性よりも劣っている」というステレオタイプを抱いており、これが上の考えと結びつくと「女性は男性よりもこの分野で成功できな

    才能が必要と考えられている分野ほど女性研究者の比率が低い - まとまり日記
  • まとまり日記

    ChatGPTに数字の語呂合わせになる文(「いい国」→1192のようなやつ)を作ってくれるように頼んだが、全然できなさそうなことがわかった。言語系のタスクは得意だと思っていたので(また語呂合わせになる文を作るプログラムを組むのは簡単だと思うので)意外だった。 数字語呂合わせのなんたるかをわかっていないchatGPT バイデン氏やトルドー氏については書いてくれるのだが。 さて以前のエントリで述べた不満研究事件だが、このプロジェクトのメンバーのプラックローズとリンゼイが書いたが翻訳されるという(原著についてもわたしは未読)。このが話題になる理由の一つには彼らがこの事件を起こしたからだろう。しかしわたしは、少なくとも不満研究事件に関するかぎり、彼らの主張の解釈にはかなり注意が必要で、きちんとした検討なしに額面通りうけとることはできないと考えている。このエントリではそれを一つの偽論文を題材にし

    まとまり日記
  • なぜ・何を・どうやって科学者に科学哲学を教えるのか - まとまり日記

    という論文を読んだ(リンク)。著者はスウェーデンの科学哲学者で、科学哲学が科学者及びその卵である理系学生に貢献できる理由と方法について書いてある論文だ。 なぜ教えるのか 科学者やその卵である理系の学生にに科学哲学を教えるべき理由として、著者は方法論的な理由を強調する。科学者の養成過程で、学生はその科学の方法論についても学ぶ。しかし著者の見るところ、その方法論にはきちんとした正当化を欠いたまま教えられているものがあるという。著者の挙げるのは次のような例だ。 経済学では単純なモデルが尊ばれる。たとえばは著名なミクロ経済学の教科書の著者であるヴァリアンは「考えられうる限りで最も単純なモデルを書き付けて、それがなおなにかおもしろい振る舞いを見せているかチェックせよ。そしてもしそういう振る舞いを見せているなら、モデルをもっと単純にせよ」と述べる。しかし著者の見るところ、なぜ単純なモデルが優れているの

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