菅首相が将来の退陣を約束したものの、日本の政治はますます混迷の度合いを深めています。この原稿を書いているのは内閣不信任案が否決された翌日ですが、1週間後になにが起きているかはだれにも予想できません。 なぜこんなことになってしまうのでしょう。この謎は、理屈としては説明可能です。 アメリカの市井の思想家ジェイン・ジェイコブズは、人間社会には「市場の倫理」と「統治の倫理」という相異なる正義の原理があると述べました。 市場の倫理というのは「商人道」のことで、勤勉や倹約を尊びますが、もっとも重要な掟は「契約を遵守すること」です。顧客との約束を守らず、不良品を売りつけたり、請求額を水増しするようではだれも信用してくれませんから、市場から退出するほかありません。 その一方で、真面目に商売をしていればその評判はやがて広まって、遠方からも客がやってくるようになるでしょう。商人道においては、正直者は報われるの