. いわゆる「ブリタニカ」論文執筆にあたって、フッサールとハイデガーの間で超越論的還元の意義をめぐる係争がなされた翌年から、二人のもとで学び始めたレヴィナスは、両者の争点になっていた「還元の出発点」、「還元はどこから」という問いを自らの課題として受け止め、やがてそれを「他者」という全く新たな次元で考えていくことになる。この意味でレヴィナスの哲学は、現象学的還元論の徹底した形態という側面を有している。本論は、レヴィナスがハイデガー的問題提起を自らの問いとしつつ(『フッサール現象学の直観理論』)、絶えずフッサールに立ち戻って還元の問題を検討し続ける(『全体性と無限』、『存在するとは別の仕方で』)ことで、彼が「還元」をめぐる問題のうちに何をもたらしたのか、そしてそれが現象学においていかなる意義と問題性を有しているのかを問おうとする。 フッサールは、超越論的還元によって、あらゆる存在者がそこにおい