文/鈴木拓也 徳川家康は江戸開府とともに、全国的な道路網の整備に着手。江戸後期には、本州の最北端から最西端まで街道が張り巡らされた。 この街道整備は、参勤交代を含めた幕府による全国統治がねらいであったが、庶民が遠方まで旅できるインフラにもなった。お伊勢参りに代表されるように、神社仏閣の参拝を名目に物見遊山をすることは、人々の大きな憧れであった。 その頃の旅といえば、男がするものというイメージがあるが、実は女性も盛んに旅に出た。藩主の妻から町人まで身分もさまざまで、たいがいは男性を交えてのグループ旅行であった。年齢層は40代半ばから50代が多いのは、子育てや主婦業が一段落して第二の人生を謳歌していることの表れだろう。 そうした江戸時代の女性の旅の実情をまとめたのが、書籍『江戸の女子旅―旅はみじかし歩けよ乙女―』(谷釜尋徳/晃洋書房)。読んでみると、当時の女性のライフスタイルの一端が垣間見えて