畏れ、敬い、ときにはすがる対象となる神。古代から人間は、神との距離をはかりながら生きてきた。古代の神話や文学では、人間はただ「従属」するだけではなく、ときにはしたたかな対応をみせる姿も描き出す。第1部の最終回は、神と人間の「取引」の歴史をみていく。 連載 わたつみの国語り 第1部(全4回) >(1)「東方の美しい国へ」生駒の廃駅に残る征服の歴史 >(2)母は「ワニ」 神話に見る動物との「婚姻」 >(3)クスノキ 古代の貴重な輸出資源 大阪市住吉区の住吉大社は、航海の神として信仰を集めてきた。境内に並ぶ石灯籠に刻まれた文字を見ると、江戸時代に海運関係者から多く寄進されたことがわかる。時代をさかのぼると古事記や日本書紀は、現代の感覚から遠く離れた神へのささげものが古代にあったことを記している。