マフィアの世界で若くして組織の上流への上り詰めたという著者だが、最後まで本書を読んだ感想は、正直拍子抜けした、だ。ジェノヴェーゼファミリーのカポ、マリオとの話し合いや、著者がマフィア時代に実父とノービィ・ウォルターズとの交渉(シットダウン)の描写は臨場感があって読み応えがあって面白った。しかしそういったのはごく一部で、本書の大部分は巷によくあるビジネス書や自己啓発書に書かれてあるのと何ら変わらない。具体的には、信頼できる仲間を見つけろ、ビジネスの成功には努力が必要、税金は必ず払え等々。 元マフィアの著者が、「企業犯罪は割に合わない」「違法行為は必ず誰かが見ている」と説くのは、もはやなんと表現すれば良いか分からない。丸くなって一般論を述べるのではなく、シットダウンでは沈黙を通すなどマキャベリ的思想にもっとフォーカスしてほしかった。