ちょっと前に松沢裕作先生の『町村合併が生まれた日本近代』を読んだ。以下これに関連して考えたことをつらつらと備忘のため。本書については、実のところはじめは明治の大合併においてどのような町村合併が行われてきたのかを分析するものだと思ったんだけど、メインテーマはそこではない。町村合併を可能にした条件として、町村合併の前段に人々が生きるために「村」に帰属し、「村」の単位で外の世界と接触していたのが、個人という単位として扱われるようになっていたことを議論するところにある。それは要するに人間が「村」ではなく個人として国家との関係を結ぶことを求められるようになったという変化を描くということで、実のところ「明治維新」よりもラディカルな社会革命を描いたものだと思う。 一番興味深いと感じた議論は、村役人という近世村のリーダーたちが「村」をめぐる負担−「村」単位で税金を納め村請制のような制度−に耐えかねる中で従