7年8カ月に及ぶ在任期間を「攻め」の姿勢で駆け抜けてきた安倍晋三首相。だが、こと未知のウイルスには通用しなかった。数々の難局に対して批判に正面から答えず、国会での答弁拒否や文書改ざんで乗り切ってきた政権だが、ウイルスには無力だったといえる。健康の問題を理由に退陣することについては気の毒に思う。だが、政策の評価に同情を差し挟めば、次につながる教訓を見失う。 安倍政権は、同盟国のための武力行使を可能にする集団的自衛権という憲法の根幹を問う安全保障関連法の成立を強行した。そのほかにも、秘密を漏らした公務員を罰する特定秘密保護法、組織犯罪を準備したとみなされれば罪に問われるいわゆる共謀罪など、平和や人権に大きな変化をもたらしかねない法律を次々と成立させた。 野党や国民から批判の声が上がっても、正面から答えない詭弁を弄して、数の力で政権を維持してきた。「戦後レジームからの脱却」を掲げた、いわば安倍流