【書評】『at プラス 08』(太田出版/1365円/雑誌) 【評者】大塚英志(まんが原作者) * * * 神戸震災の時、筑紫哲也が「温泉街の湯気が立ちのぼるようだ」とコメントし顰蹙を買った長田区のあたりに今、日中立つと軽い吐き気がする。目に入る風景全てが建築家によって再設計された人工物であることの不快さは学生時代を過ごした筑波の学園都市とも重なる。それは自身に世界を設計する権利と才能があると信じている建築家という人種の不遜さだけが人の生きる場所を支配しているからだ。 そして東北の海岸線が長田区と同じ光景と化すことは後藤新平の持ち上げられ方でも充分予想がつくが、そのことを「予兆」したかのように同誌に掲載された磯崎新の地震直前のインタビューを読むと吐き気どころか「殺意」さえ覚えた。比喩でなく。 磯崎はここで「建築」とは世界そのものの制度設計であり、「国家」を表現することが「都市計画」や「建築