ケニアのサンブル女性には、従来、みずからの結婚の時期についても相手についても、いっさい何の決定権もなく、ただ決められた結婚にしたがうという選択肢しか与えられていなかった。また、「恋愛結婚」をする人は、例外的には存在してきたが、「規範の逸脱者」としてネガティブにとらえられてきた。しかしながら近年、サンブルの結婚の形態は大きく変わりつつある。学校教育を受けた女性を中心に未婚の母となる女性が増加し、彼女らのなかには、出産後に恋愛相手と結婚する人や生涯独身をつらぬこうとする人も登場している。本稿では、サンブルの女性が、いかなる背景のもとに、どのような方法で、みずからの結婚にかんする主体性を創出しているのかを、いくつかの事例から明らかにする。