<チェチェン同性愛者弾圧を告発する映画が問いかけるもの――ドキュメンタリーと報道を分けるディープフェイク「演出」の是非> 2月26日から日本で公開予定のドキュメンタリー映画『チェチェンへようこそ― ゲイの粛清―』は、国際社会と切り離されたロシア連邦内のチェチェン共和国、ラムザン・カディロフ政権下で起こっている過酷な同性愛者弾圧の現状を伝える作品だ。 本作品では証言者を保護するために、ドキュメンタリーとしてはじめてAI技術で顔情報を別人のものに書き換えるいわゆる「ディープフェイク(制作側では「フェイスダブル」と表記)」技術が採用されている。後半、ひとりの勇気ある証言者の告発記者会見での発言中、顔が次第に本人のものに変化していく演出がある。だが、もしこのシーンがなければ冒頭の「迫害により避難している人々の安全のためデジタル加工により本人たちの顔は隠されている」という注意書きを見てさえ、そこまで