このところ、「大江山酒呑童子絵巻(おおえやましゅてんどうじえまき)」の江戸初期の未公開作品を見たり、屏風に描かれた作品を見たりしてこの物語絵に関心が高まっていた。そうした中で、東京・青山の根津美術館のコレクション展「物語をえがく―王朝文学からお伽草紙まで―」(12月23日まで)のチラシを見ていたら、伝狩野山楽(かのう・さんらく)筆「酒呑童子絵巻」の画像が出ていたので出かけてみた。 会場へ入って最初の白描(はくびょう/描線を主体として墨一色で描く技法)による「伊勢物語図屏風」(8曲1隻)を見るなり、酒呑童子はどうでもよくなった。この作品、まさに江戸初期の土佐派か住吉派によって描かれたものに違いないのだが、さて、誰が描いたかということになると見当がつかない。土佐光起(とさ・みつおき)ではなさそうだが、住吉如慶(すみよし・じょけい/土佐派から離れ住吉派を起こした、やまと絵師)本人とも判断できない