防空演習は、曾て大阪に於ても、行われたことがあるけれども、一昨九日から行われつつある関東防空大演習は、その名の如く、東京付近一帯に亘る関東の空に於て行われ、これに参加した航空機の数も、非常に多く、実に大規模のものであった。そしてこの演習は、AKを通して、全国に放送されたから、東京市民は固よりのこと、国民は挙げて、若しもこれが実戦であったならば、その損害の甚大にして、しかもその惨状の言語に絶したことを、予想し、痛感したであろう。というよりも、こうした実戦が、将来決してあってはならないこと、またあらしめてはならないことを痛感したであろう。と同時に、私たちは、将来かかる実戦のあり得ないこと、従ってかかる架空的なる演習を行っても、実際には、さほど役立たないだろうことを想像するものである。 将来若し敵機を、帝都の空に迎えて、撃つようなことがあったならば、それこそ人心阻喪の結果、我は或は、敵に対して和
(一) 同じ持場で働いて居る山田という男が囁いた。 「オイ、何でもナ、近けえ内に政府(おかみ)の役人の良い所が巡検に来るとヨ」 「エッ、本当かイ夫(そ)りゃア、何時(いつ)だってヨ」 「サア、其奴(そいつ)ア判ら無えがナ、今度ア今迄来た様な道庁の木(こ)ッ葉(ぱ)役人たア違うから、何とか目鼻はつけて呉れるだろう、何時も何時も胡麻化されちゃア返(けえ)るんだが、今度ア左様(そう)は往(い)くめエ、然し之で万一(もし)駄目だとなりゃ、此世は真暗闇だぜ」 「左様サ、何しろ役人位えにアビクビク為(し)ねえ悪党揃だからナ、今迄の木ッ葉役人は瞞(だま)かされたり、脅かされたり、御馳走されたりで追ッ払われたんだが、東京から大所が来ると成りゃ、今度ア、其手じゃア往かねえ、何しろ一日でも早く来て、俺ッちの地獄の責苦を何とかして呉れなけりゃ、余命(いのち)ア幾何(いくら)もありゃしねえや」 「マア、厳重(しっ
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