遭遇した際に一瞬我が目を疑ったんだども、明治二十三年八月十六日付の官報第二一四〇号、二〇二頁の「全国気象摘要」の項をよく見ると: 第一行末尾「福岡ニ七百五十六」や、第四行中程「温度十九度)ニ至ル間ハ」の「ニ」が、「半角カタカナ《ニ》」になっている。 もっとよく見ると漢数字の「二」であるようにも見えるけれど、第六行後半「根室ニ二十一度ナリ」の「ニ二」と見比べると、やはりカタカナの「ニ」なのだろう。 この頃の官報は、二段組のひとつの段を、六号活字なら一行=ベタ組四十六文字、五号活字なら一行=ベタ組三十四文字+クワタ(四分の一文字)で組んでいる。 五号活字の本文に必ず必要となるクワタについては、意味の区切りなどタイポグラフィ的な要請にはほとんど無頓着な状態で組んでいることが見える。 六号活字の本文については、句読点や括弧で処理しきれなかった行長を、どういうわけか「半角カタカナ《ニ》」によって調整