デザイナーとして「私というものがない」という。「だから、自分がある人、言いたいことがある人に興味がある。難しければ難しいほど好き」=宮坂永史撮影 多くの文芸書や人文書を通じ、「デザインとしての装幀(そうてい)」を追求してきた菊地信義さん(70)。 近年の仕事を収録した『菊地信義の装幀1997~2013』(集英社)が刊行され、横浜市の神奈川近代文学館では、「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』展」が7月27日まで開かれている。本を取り巻く環境が激変する中で、「装幀」の第一人者の感慨を聞いた。 「この15、16年は一番きつい戦いでした」。前作の『装幀=菊地信義の本1988~1996』(講談社)の後、現在までの仕事をまとめた3冊目の作品集を手に、冗舌に語り始めた。 折しも出版界が右肩下がりに売り上げを落としてきた時代。出版社は造本や紙質に凝る余裕をなくし、近年はエンターテインメント小説を中心に