[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) (図は、ミツバチの8の字ダンス。蜜が遠いところにある場合のダンス。中央の蛇行部分の線が太陽との間に作る角度によって、蜜の在り処の方向を示し、一巡に要する時間が蜜までの距離を示す。) ミリカンによれば、記号(=表象)の起源は、「生物が、自己の生存に適する行動を指令されるように周囲の環境を知覚する」ことにある。そのような環境の知覚=記号は、それが「いつどこなのか」という時間・空間規定を含むだけでなく、それを知覚する主体が「いつどこにいるか」という時間・空間規定をも含んでいる。これはミツバチのダンスのようなものだけでなく、人間の環境知覚も同様である。たとえば、夕日を浴びる東京タワーが見えているならば、東京タワーという表象(記号)は、「何時ごろである今、東京タワーは、周囲の環境の中のこの場所にある」という表象(記