2003年4月9日、バグダッド中心地には片手を挙げた巨大なサダムフセイン像が屹立していた。地元住民がかわるがわる木槌で怪物に挑むという隠喩的ドラマが展開されたが、像はびくともしない。そこで、アメリカ軍の戦車回収車が像を包囲し、重いロープを首に巻きつけてイラク市民の歓声の中へと引き摺り下ろした。世界中のメディアは、4月9日を“VI(Victory in Iraq)Day”と呼び始めていた。 未だ完全な勝利とはいえず、本稿執筆時には多くの課題が残されている―(ティクリットに多いと言われる)抵抗勢力を破壊或いは捕縛するための戦闘、そしてイラクの代議制政府を樹立するための数多くの任務。それでも、像の破壊を目の当たりにした世界中の人々は、このあっという間の勝利が今そしてこの先何を意味していくのか、考えさせられた。一見強い抵抗に遭い、かつての司令官からのアドバイスを拒否しながらも、米英軍はイラク政権