その色は淡い緑。味はほんのり苦く、香りはすっと鼻になじむ。「抹茶」は、日本で数百年以上の歴史をもつ、伝統ある嗜好品だ。現代に入っても、日本の抹茶文化は大きな変貌を遂げつづけてきた。茶の湯に供されるだけでなく、和菓子、洋菓子、主食などに抹茶の粉が練り込まれた「抹茶味」の食品が増えつづけている。 抹茶が日本の食を象徴する重要な役であることは、だれもが認めるところだろう。とはいえ、伝統が続かずに廃れていく食もあるなかで、こうも抹茶が現代の日本人の舌になじんでいるのはなぜなのだろうか。 そんな「日本人の抹茶愛」を探るべく、抹茶を含むお茶の研究をしている伊藤園中央研究所食品科学研究室の沢村信一室長に話を聞いた。 日本的嗜好品としての抹茶の伝統はどのように誕生して発展を遂げたのか。そして、今、抹茶に対してどのような科学・技術の視線が注がれ、抹茶文化はどのように進化しようとしているのか。前篇では抹茶の歴