今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月1日号掲載〕 ホテルオークラは最先端のホテルではない。「古風」と言ってもいい。最新のiPhoneを発表する舞台に、このホテルが選ばれることはまずない。 だがホテルオークラは東京にとって、間違いなく掛け替えのない重要な資産だ。赤坂の草月会館のホールと同じく、ホテルオークラのロビーは戦後の日本の卓越した力強さを見事に映し出している。 現代アートの祭典「ニュイ・ブランシュ」の発案者でパリ市長助役文化担当のクリストフ・ジラールは言う。「日本で泊まるのはいつもオークラだ。もしホテルがロビーを少しでもいじったら、もう二度と泊まらない」。ジャック・シラク元仏大統領も、フランス大使館ではなくオークラを定宿にしていた。 そんなオークラが5月、本館の建て替えを発表した。プレスリリースには「オークラ建築の基本である『日本の伝統美』を継承しつつ、設備面においては最新の機